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ONEPIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

2012.08.31 21:04|映画感想
・絆を阻む、絆が阻む
『ONEPIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

 omaturi.png

 2005.
 原作:尾田栄一郎
 監督:細田守
 脚本:伊藤正宏 音楽:田中公平
 美術監督:串田達也



 公開当時のキャッチコピー・・・「史上最大の笑劇!
 嘘をつけ嘘を!w
 
   ***

 これはたとえば、高橋留美子原作の『うる星やつら』に対しての押井守の劇場版『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』のような、原作テーマへの批評的視点を持ち込んで異色の傑作に仕立て上げた部類の作品なのだと思う。不条理ホラーな雰囲気としては『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ! アミーゴ!』にも通じるでしょうか。
 そして、細田守監督作品に見え隠れする「不穏さ」が一気に噴き出してしまった問題作であり。
 
   ***

 アニメの作画を語る時、「ぬるぬる動く」という表現がよく使われるが、本作でのキャラの動きはまさにそれだ。
 物語前半では、そのぬるぬる作画と秀逸な構図設計に支えられて、麦わら一味がわいわい楽しげに動きまくる。まさに「オマツリ」。
 しかし後半で麦わら一味の不和が進み、さらにオマツリ男爵と島の謎が明らかになり、作品全体がただならぬ様相を露わにしていった時、その「ぬるぬる動く」作画は、キャラ達が泥の中でもがいているような、不気味なイメージを与えるものへと一気に転化する。

 ルフィとオマツリ男爵のラストバトルはいわずもがな。
 死後の世界のような荒涼とした舞台で、ダークな色合いの縦横無尽に暴走する作画でルフィの苦闘は描かれる。彼の雄叫びには狂気が宿り、仲間達の呼び声は声援というにはあまりに暗く弱々しく、まるで死霊の囁きだ。
 そして、そんな悪夢的テイストとオマツリ男爵の悲嘆をギロチンのごとく切り捨てて、物語は唐突に大団円を迎える。後味としては、強過ぎるホラー要素がめでたしめでたし感を許さない。
 とてもこわい、けれど切実な物語だ。

   ***

 強引にハッピーエンドにされたけれど、その途上で決定的にまで揺るがされた仲間の絆。
 麦わら一味の中でも不和もそうだが、仲間を奪われたルフィが一時とはいえ他の海賊と手を組んだことの方が実は意味は大きい。

 本作の公開に際したWEBアニメスタイルでのインタビューに、かなり重要な会話が載っている。

 ↓以下、一部引用
 
小黒:『ONE PIECE』ファンにとっては、ちょっと危険な回答を含んだ映画になっているよね。
細田:そうなのかな。
小黒:だって、今回の映画では、サンジやゾロも結果的に助かって、いつもの冒険に戻るんだけど。みんなが死んじゃっても、ルフィはお茶の間海賊団とか、チョビ髭海賊団と一緒に旅を続けられる可能性を示しちゃってるじゃない。
細田:そうだよね。
小黒:いつまでも昔の仲間にこだわるのもよくない、という事を言ってる映画でもあるわけじゃない。
細田:うん。だってさ、ルフィの目的は、ひとつなぎの財宝を見つけて海賊王になる事であって、今の仲間と冒険する事ではないんだもの。逆に言えば、ひとつなぎの財宝を見つけるために、仲間が必要だと言ってるわけで。そういう人物なんだよね。


 (中略)

 新しい仲間を求めるって事はさ、古い仲間からすれば冷たいように思えるけど、仮に今までの仲間を失った時にでも、前を向いて新しい仲間を求める活力というのが、僕らには必要だなって思ってるわけ。この映画を観てくれるような若い奴らにもね。だから、ルフィっていうのは、仲間を失った時に、もう一度別なかたちでそれを探せる奴であってほしいと思うんだ。

 WEBアニメスタイル/『ONE PIECE ―オマツリ男爵と秘密の島―』細田守インタビューより
 http://www.style.fm/as/13_special/mini_050815.shtml 


 実際、細田監督の指摘は半分ほど当たっている。
 原作の『ONEPIECE』は、2009年辺りからのシャボンティ諸島編~頂上戦争編では、冒頭で麦わらの一味が本当にバラバラに分散させられてしまう。ルフィはショックを受けるが、同時に知った兄・エースの危機を救うために、新たに出会ったキャラを味方につけ、さらにかつて敵同士だった者とも手を組み、そうして暫定的に「新しい仲間」を率いて戦争に乗り込む。
 その上で、戦争後に時間をおいて麦わらの一味は集い、再出発する。

 この一連のエピソードで、ルフィの外向きの仲間意識(元々ルフィは相手がどんな存在でも気に入れば仲間にするキャラだった)がさらに広く懐深いものへと強化され、作品そのもののスケールの拡大にもつながった。

 本作はONEPIECE作品としては異色なようでいて、実はかなり本質を突いた作品だったのかもしれない。

   *** 

 そして現在、細田守監督の最新作『おおかみこどもの雨と雪』が公開中で、あの作品と並べて語られるのは『サマーウォーズ』『時をかける少女』がほとんどのようだが、本作『オマツリ男爵』も相当通ずるところがあると思う。

 僕が本作で一番印象づけられたのは、家族で結成された「お茶の間海賊団」だった。
 父親と息子一人・娘二人の四人家族。母親はいない(!)片親の家庭だ。船長の父親はかつてオマツリ男爵に敗北しており、何とも頼りない人物で、常に子ども達から軽んじられいる。
 しかしオマツリ男爵との勝負に決着をつけるのは他ならぬ彼なのだけれど、その前にとても印象的なシーンがあって。

 麦わらの一味がリリーカーネーションに吸収されてしまいそうになった時、お茶の間海賊団の子ども達は身を挺して彼らを助けようとする。しかし父親は、子ども達の行動を阻んで引き戻し、罵声を浴びながら彼らを抱き締める。 
 僕には、そんな彼の姿が、『おおかみこども』で息子が自立しようとした時にそれまでの優しく身守る立場をかなぐり捨てて必死で引き留めた母親に、確かに透けて見えたのだ。

 しかも、『オマツリ男爵』では仲間や家族の絆は男爵によって強制的に解体されていたが、時を経た『おおかみこども』では、家族が離れていくことは人為的なものではなく、この世の摂理であるかのように描写される。

 親は子どもを想うがゆえにその自主性を阻んでしまう。子どもは必ずしも親の意図を理解できず、応えられない(『サマーウォーズ』の侘助もそうだ)。そして家族は、この世に生きているがゆえに、いずれは別れわかれになっていく。
 そんなやりきれない家族の在り方が、批判対象になるような表層の理想像とは別に、細田作品の底に流れているのではないだろうか。
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テーマ:映画レビュー
ジャンル:映画

tag:ワンピース オマツリ男爵と秘密の島 細田守

Comment

No title

ライターの不手際でシナリオ未完成のまま制作スタートしたそうですが、
そのことによってかえって、
おそらくはハウル降板によって細田監督が抱えていた不穏さが
割とストレートに噴出していますよね、

去年ワンピ一気読みする中でも海賊団がバラけてからの件は
濃厚に本作の影響を感じました

そして一気読み後に見た本作の「ヤバさ」ったら!
誰か、留美子先生が試写会飛び出したよ、引き留めて!

そうか『おおかみこども』の自然な離散ともつながってるんですね、
僕等にとって「不穏」であるものが、
実はもしかしたら「しがみついてしまっていること」なのかも知れない.

ところで今『ウテナ』にハマっていて、もう今見ると凄い才能が大結集してるんですが、
コンセプトデザイナーが小黒さんなんですよね、
小黒さんが監督したアニメなんてのも見てみたいな~と思ってます.

>ヒノキオさん

コメントありがとうございます。

> おそらくはハウル降板によって細田監督が抱えていた不穏さが
> 割とストレートに噴出していますよね、

本記事に載せたインタビューの続きでも、細田監督、本作へのハウルの影響について激白していて・・・w「やべえよやべえよ」と思いながら読んでましたw

> 去年ワンピ一気読みする中でも海賊団がバラけてからの件は
> 濃厚に本作の影響を感じました

尾田先生、本作観て思うところはすごくあったでしょうねえ。

ああ、そういや「ビューティフルドリーマー」に留美子先生が激怒したとかどこかで読んだようなw
でもこういうのは原作レイプとかそういうんじゃなくて、むしろすごくリスペクトしつつ真剣に向き合った結果生まれるものなんだろうなあと思います。
水島・會川版ハガレン然り。

> そうか『おおかみこども』の自然な離散ともつながってるんですね、
> 僕等にとって「不穏」であるものが、
> 実はもしかしたら「しがみついてしまっていること」なのかも知れない.

そうなんですよねえ、ヒノキオさんが仰った「ウォーゲーム」でのメールの件もそうですが、善意や愛情ゆえに人を引き留めたり妨害してしまうっていう達観?透徹?した思想が細田作品にはあって。
しかもそれがちらちら見え隠れしている程度なら「不穏」や「切なさ」に留まってるんですけど、本作「オマツリ男爵」みたく真正面から突きつけられると完全に「ホラー」になるっていう・・・w
藤子F先生的な怖さを感じましたw

> ところで今『ウテナ』にハマっていて、もう今見ると凄い才能が大結集してるんですが、
> コンセプトデザイナーが小黒さんなんですよね、
> 小黒さんが監督したアニメなんてのも見てみたいな~と思ってます.

最近だとUN-GO脚本集発行にも携わってた人ですね。
インタビューとか読んでても、質問や目のつけどころはかなり鋭いなあと思わされます。
アニメ脚本もいくつかやってるし、いつか監督もない話じゃないですねー。

ヒノキオさんのウテナ感想も楽しみにしてます!
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江楠

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