009 RE:CYBORG

2012.11.16 15:27|映画感想
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 原作:石ノ森章太郎『サイボーグ009』
 監督/脚本:神山健治
 音楽:川井憲次 キャラクターデザイン:麻生我等 
 絵コンテ:青木康浩、林祐一郎
 キャスト:宮野守、斎藤千和、小野大輔ほか
 制作:Production I.G、サンジゲン


 On your feet. Come with me. We are soldiers stand or die.
 Save your fears. Take your place. Save them for the judgment day.
 Fast and free. Follow me. Time to make the sacrifice.
 We rise or fall.
 (『攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG』OP曲・origa「rise」より)
 
  *** 

 2D版を鑑賞。なので、本作が3D映画としてどうかという話はしない、と最初にことわっておく。勿論、2D版であっても全編3DCG作画の魅力は充分堪能できたけれど。

 知っての通り、本作は石ノ森章太郎『サイボーグ009』を原作としていて、これまで幾度もアニメ化された末の、神山健治監督による映画化なわけだが。

 かつて『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズを手掛けた神山監督が、国際色豊かなサイボーグ達の活躍する『攻殻』の原形ともいうべき『009』に挑む・・・というのは非常に納得できる(正直、攻殻三期作ってほしいってのもあるけど)
 が、それにしても相手は故・石ノ森章太郎のライフワークでしかもラストが非常にあやふやになっている未完作。いくら神山監督でも、『009』のイメージを現代的にリブートさせることで精一杯なのでは・・・という不安、危惧はあった。 
 しかしようやく観てみれば、しっかり「神山健治監督作品」になっていて驚いたというか安心したというか。

 00ナンバー・サイボーグ達が再び集うきっかけとなる、「『彼の声』をきいた者達が世界各地で次々と自爆テロを起こす」という事件は、『攻殻S.A.C.』のスタンドアローン・コンプレックス現象をはじめ、神山作品のフィルモグラフィ―に一貫する「意志の伝播」のテーマに連なるものだ。そして「彼の声」から起こるテロの数々と国家間の謀略は、神山監督が得意とするポリティカル・エンタテインメントとして存分に描かれている。
 さらにその「彼の声」なる概念が「神」に起因するものだった・・・という展開が、『009』原作の「神々との闘い編」に上手く繋げられている。

 ただ、やはり新009第一作目ということもあって・・・いや第一作目「なのに」、00ナンバー全員の活躍に尺を取れなかったのは痛い。
 彼らが一堂に会して共闘する展開がなかったのはストーリー上仕方ないとはいえ、008(ピュンマ)の見せ場もない途中退場はどうにかならなかったのだろうか。せっかく水場に登場させたんだから、せめて泳ぐシーンくらい・・・。
 それはともかく、キャスト陣は皆軒並みハマっていたように思う。特に、平成TV版の『サイボーグ009』('01)の櫻井孝弘版009が大好きだって僕にとって、今回の009に宮野守というキャスティングは平成TV版をふまえたもののように感じて嬉しかった。とりわけラストの009の悲痛な激昂は、彼でこその最適な演技だった。
 
 さて、この元々『009』にあった物語のラスボスに「神」を持ってくることについて、僕個人はあまり良い印象を持っていない。作品テーマの行き詰まりに対して「言葉を濁す」方便として、それはあまりにも使い勝手が良過ぎるからだ。けれど、ラストにその禁じ手を使わざるを得なかった石ノ森章太郎の苦悩は『009』終盤の迷走自体に生々しく表れていて共感もしている。
 そして自分の『009』の始まりにあえてこの「神々との闘い」を持ってきた神山監督の心情も分かる気がする。本気の本気で『009』を引き継ぐにあたって、原作の未完部分をスルーするわけにはいかなかったのだろう。まさに「終わらせなければ、始まらない」というわけだ。

 そして「神」に抗うストーリーとなった本作はやはりラストは若干抽象的になったものの、決して神山監督が「向こう側にいっちゃった」感じはしなかった。むしろいつものように、観客に向けて最後に作品テーマを委ねる着地だったと思う。
 本作での神は、神は神でもいわゆる「内なる神」だ。人類一人ひとりに内在する深層意識。そして、神に抗う者こそが「天使」であるという解釈。
 「彼の声」が発する滅びの指向性に、009は涙ながらに反駁する。そして彼は002とともにミサイルを相殺し流れ星となって(「地下帝国ヨミ編」ラストをふまえたもの)、自分達の正義も人々に伝播していく可能性に賭ける。
 それはさながら、滝沢朗のミサイル迎撃(『東のエデン』)とタチコマ達の特攻(『攻殻S.A.C. 2nd GIG』)を繋げたような。神山作品で何度も観た、複雑なロジックのぶつかり合いの果てに、誰かの切なる想いが空を駆ける光景。
 水は低きに流れ、善意よりも悪意が広く深く拡散する今の世の中で、それでも、それでも・・・。そんな痛切な意思、祈りが、009という枠組みを借りて今再び最大スケールで掲げられる。ここにこそ、神山監督が『009』を作る本当の意義があったのだろうか。
 それは、作中では他の誰にも伝わらないのかもしれない。でもだからこそ、メタ的な意味で、観客の僕等がそれをみるのだ。
 真っ暗な劇場のスクリーンに二つの流星が映る時、この物語ははじめて完成する。
  
   ***

 そして上映終了直後、僕の後ろの席に座っていた女の子がこう呟いた。
 「うーん、これは・・・自分で考えないといけない」
 少なくとも、今、ここに一つ・・・。


 追記:宗教学的要素が大きい本作が、海外でどんな反応を受けるのかにはとても興味がある。日本よりむしろ「罪の文化」たるキリスト教圏でウケたりして・・・?
 それにしても、まさか神山監督が観念的なラストシーンを作るようになるとはね。

 追記2:本作を面白いと思った人には、『仮面ライダーアギト』('01)もおススメします。『アギト』もまた石ノ森原作であり、『009』「神々との戦い編」にオマージュを捧げたストーリーになっています。

 追記3:もともとは神山監督は脚本のみで、押井守が監督をやる予定だったそうです。で、「アニメスタイル」002号で神山監督の制作秘話インタビューを読んだら、「♪神山さんからお手紙着いた、押井さんたら読まずに食べた」的なことになってて爆笑しました。
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テーマ:映画レビュー
ジャンル:映画

tag:サイボーグ009 神山健治

Comment

No title

これは原作知ってた方が良かったのかな~と思って

というのも「まだ始まり」に見えたんですよね
確かにテーマは壮大過ぎるけど神山監督ならこの先のストーリーも
いくらでも創れるでしょうし、

ともかく京アニと神山監督は自分たちで背負いきれないくらい
魅力的なシリーズを乱発し過ぎ!w

>ヒノキオさん

> 確かにテーマは壮大過ぎるけど神山監督ならこの先のストーリーも
> いくらでも創れるでしょうし、
題材はわんさかあるので、本当に、ここからどんな話を作っていくのかにすごく興味があります。
それに、やはりまだ実験段階なフル3DCGの発展を見ていきたいってもあるし。
今度こそピュンマやブリテンの活躍を・・・w

> ともかく京アニと神山監督は自分たちで背負いきれないくらい
> 魅力的なシリーズを乱発し過ぎ!w
京アニも、フルメタとかハルヒとか氷菓とか、眠らせるには惜しいシリーズいっぱいですよねw
『中二病』も、1クールじゃもったいなかったしなあ・・・。
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