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UN-GO各話感想③ 第6話

2012.12.02 20:58|UN-GO
 『UN-GO』が12月10日からCSで再放送ですってよ。
 ウチは契約してないんで観れないですけどねーはっはっは(泣)

 前回の記事が長文で大変読み辛かったのを反省して、今回から小見出しつけました(結局長文)。

 ※事件の真相ネタバレがあります。
 
   ***

 第6話「あまりにも簡単な暗号」
 脚本:會川昇 絵コンテ:五十嵐卓哉 演出:中村里美 
 原案:「アンゴウ」

 ~あらすじ~
 海勝麟六の旧友・矢島は、政治犯として収容されていた刑務所内で、ある囚人から麟六の蔵書印が押された書籍を譲り受ける。その本には、謎の暗号文が書かれた、矢島特注の原稿用紙が挟まれていた。暗号の内容は・・・? 
 出所した矢島に調査を依頼された新十郎だが、暗号は意外にもあっさり解ける簡単なものだった。それは、誰かとの待ち合わせの文章。
 また、矢島が家を空けていた間に、彼の妻は失明し子ども達は行方不明になっていた。
 海勝麟六と矢島家の関係に疑いが向けられ、そして・・・。


・第6話のポジション
 UN-GO』は元々事件背景の人間ドラマが重要視されているわけだが、第6話は特に依頼者・矢島の家族の物語として成立している。新十郎は本当にただの探偵でしかなく、代わりに海勝麟六が一個人として事件に積極的に関わっている、というイレギュラーな回。
 そもそも今回は事件原案からして『安吾捕物帖』シリーズではない「アンゴウ」という短編だ。だから、本来別の物語に『安吾捕物帖』/『UN-GO』を接続した話、というメタ的な視点で観ても面白い。
 そして、シリーズ中最も難解な第7・8話への布石となる回でもある。その第7・8話から最終エピソードにつながっていくことを考えると、この第6話は丁度シリーズの折り返し地点にあたるのだろう。
  
・因果と風守
 ちょっと注目しておきたいのは、探偵事務所での風守をみた矢島と新十郎達の会話。

 矢島「人間じゃないのか」
 因果「人間だよ」
 新十郎「R.A.Iです」

 しかし因果は、第4話では風守を「人間じゃない」と評している。それがこの第6話で「人間だよ」と真逆のことを言う。
 ターニングポイントとして思い当たるのは、第5話での新十郎と風守の問答だろうか。「人間は奇妙だ」と機械ぶりながらも、新十郎の内面を看破してみせた風守。あの時因果はただニヤニヤしているだけだったが、内心感じるところは大きかったのかもしれない。
 因果は、風守にも人間としてミダマを見るのだろうか?(あ、そういえばDVD最終巻のパッケージ裏で・・・)

・UN-GO,UN-RISE
 本作のタイトル「UN-GO」とは、原案作者の坂口「安吾」の読みを英語風にアテたものであるが、英語として直訳すれば「行かない」「進まない」という、前進否定の意味だ。そして本作のキーワードである「堕落」。この二つのモチーフに反して、劇中では「前進」や「上昇」の描写、それを連想させる事物も多い・・・。
 この「前進/後退」「上昇/下降」という二組の運動を軸に『UN-GO』を観ていくと、その物語、テーマがより視覚的に理解できるのではないか。ひいては、會川脚本を映像に起こした水島監督以下コンテ・演出スタッフの苦心もw
 え? 手前のこじつけ? 知らんな。

 遡るが、第一話序盤から主要キャラの動きを見てみよう。
 まずは海勝梨江の「前進」。
 勝手に麟六の代わりにパーティ出席を任されていたことを知った梨江は、麟六を問い詰めるべく屋敷の廊下を進む。その時アングルは梨江の斜め正面に据えられ、彼女が手前(視聴者側)に向かってぐいぐいと力強く前進してくる様子を映す。これだけでも、梨江が積極的で視聴者に近しいキャラクターだということが明確に印象づけられている。

 そして結城新十郎の「上昇」。
 謎の招待状を受け取り、加納氏のビルで梨江と虎山の乗るエレベーターに新十郎が割り込んでくるのが彼の初登場シーンだ。 本来「堕落」を背負う彼は、最初虎山からエレベーターに乗ること=「上昇」することを拒否される。着いた「最上階」でも彼の言動は周囲から顰蹙を買う。上昇すること・上昇した先の世界は決して彼の居場所たり得ない。ならばそこは何か。彼は言う。「しかし私が呼ばれたってことは、何か事件が起こるってことですよ。大事件がね」
 さらに新十郎が「エレベーター」という自動の乗り物でパーティ会場/後の事件現場に向かうという展開自体、そこへ彼が自分の意思ではなく何者かによって「招待されている」ことを強調する演出なのだろう。他にも、たとえば第3話で梨江によって焼死事件のあった佐々邸へ連れられる時は、彼女の馬に乗っている(ご丁寧に、劇中で梨江が馬は車ではない「乗り物」であると嘯く一幕が)

 そしてそれ以外は、新十郎はひたすら歩く。「前進」する。
 彼は車やバイクは持たず、事件現場や依頼者のもとへ、自分の意思での時は必ず徒歩で辿り着く(交通機関を使った場合があっても省略されている)。それをふまえると、第4話で彼が廃車を寝床としたシーンは示唆的だ。彼にとって乗り物は自分を事件へと誘う装置に過ぎず、それ以外の目的で動く/動かすことはないのだ(追記:極めつけとして、最終話の事件解決後、新十郎はある誘いを「拒否」する!)。

 彼は事件を解決すると、やはり自分の足で歩き去っていく。それが話のラストシーンになることも多い(第1話、第5話、第8話etc・・・)。いずれもアングルは新十郎(と因果、風守)をフルショットで映し、彼は背を向けてフレームの彼方へ消えていく。カメラは彼を追わない。それは動作としては前進(GO)なのだが、視聴者の視界から遠ざかっていくという意味では後退(UN-GO)ともとれる、両義的な描写だ。第一話ラストでの梨江の視点を視聴者は幾度も共有する・・・。

 そして海勝麟六はどうか。
 彼は、物語前半では基本的に前進/後退も上昇/下降もしない、動かないキャラだ。
 第1話~第3話はずっと仕事部屋のデスクに座って、立ち上がりもしない。第4話では精々ダイニングでテーブルと冷蔵庫を往復するのみ。第5話では再びデスクに居座っている。そしてモニター越しに事件を俯瞰し、「美しい結末」として解決し様々な工作を施す。そもそも彼の仕事部屋は屋敷の何処にあるのか視聴者には明かされない。
 これらの描写が、海勝麟六のあたかも神のような次元の違うポジションを明示している。

・動く海勝麟六
 それがこの第6話以降、麟六のムーヴメントは急速に増している。
 海勝邸で麟六が自分の本を探すシーンで、彼は巨大な本棚の上段を見るために昇降機を使っている。それは、第1話で新十郎がエレベーターで事件に招かれたシーンと重なる。そしてこれから海勝も事件現場に赴くことになるのを予感させる・・・。
 そしていよいよ終盤、彼は事件現場?に車で到着し、自らの足で新十郎達に歩み寄ってくる。
 「海勝麟六です」
 最初観た時は、何で今更名乗ってんだ?と思ったが、そういえば、これがモニターを介さない新十郎と麟六の初めての対面だったのかもしれない(直接会うと「~ですか」と丁寧語になった新十郎の反応がリアルw) 

「人は何度恋をしたところで、そのつまらなさが分る外には賢くなるということもなさそうだ。そのくせ、恋なしに、人生は成りたたぬ・・・」
(原文:何度、恋をしたところで、そのつまらなさが分る外には偉くなるということもなさそうだ。むしろその愚劣さによって常に裏切られるばかりであろう。そのくせ、恋なしに、人生は成りたたぬ。/「恋愛論」より)

 第5話では新十郎と彼が敵対する人物が両方とも坂口安吾の言葉を述べた。そして今回、いよいよ海勝麟六も安吾の言葉を口にする。
 ただしそれは新十郎と対立するためのものでも事件を締め括るものでもなく、己の内面を問われての返答としてだ。それは彼の心情吐露というより、むしろ自分の言葉ではない引用科白によって真意をはぐらかしているともとれる。
 上昇/下降、前進/後退の運動を経ても、彼のミダマは明らかにならない・・・。

・『UN-GO』のミステリ論 
 第6話はUN-GOのフォーマットを相対化したのに合わせて、ミステリ全体のフォーマット、「探偵」の在り方についてもメタ的に物語っている。

 今回の事件は、刑務所の囚人・自称“小説家”の企みのもとにあった。
 矢島に暗号文入りの麟六の蔵書を渡すことで、妻と麟六の関係、子ども達の失踪に目を向けさせ、最後には疑心暗鬼になった矢島が妻を殺害する――というのが“小説家”の作った筋書きだった。
 そして新十郎も“小説家”に目をつけられ、矢島に疑念を抱かせる探偵としての役割を振られていた。 

 ラストで新十郎に詰問された“小説家”は言い放つ。
「それが名探偵の役割だからだ。どんな冷酷な結果になろうと、全ての被害者が殺されたあとに推理を終えるのが名探偵だ。どんな悲劇的な理由があろうとも、全て白日の下に曝すのが名探偵だ。」
「君は私に選ばれたのだ。この世界最後の名探偵として!」


 つまり、探偵が事件に下す解決は本当のものなのか? ということ。
 そもそも『UN-GO』は、麟六が事件をうわべだけ解決し、新十郎がそれに異を唱えて真実を暴くという二重推理の構造だった。
 しかし今回、新十郎が導き出しかけたのは矢島の妻の殺人疑惑で、矢島は妻に殺意を向けることになる。それは“小説家”の意図した展開だった。殺人はすんでのところで阻止され、新十郎は改めて暗号の真意を解き明かす。それは正しかったが、事件の全貌に至るものではなく、麟六によってようやく全てが明らかになった。
 “小説家”の思い描いた物語においては、新十郎の最初の推理こそが「作者の意図」に適うものだった。そして現実の事件としての真相を導くことができたのは、“小説家”の物語に知らず囚われた“探偵”の新十郎ではなく、一個人として事件に関わっていた麟六だった。

 そして海勝麟六は言う。
 「真実は、常に一つだろうか・・・」
 新十郎はミダマを暴き、事件の真相を明らかにする。しかし今回その方式を突き詰めていれば、矢島の妻の抱える「子どもをネグレクトしていた」というミダマの開示で矢島の殺意は決定的なものになっていただろう(それこそが“小説家”の目論見)。海勝の社会秩序優先の推理は真実を覆い隠すが、個人の想いに拘る新十郎の推理も常に真実に至れるとは限らず、人を傷つけることもある。事実、第5話の推理ミスでそれが証明されている。

 これらの展開から、ミステリにおいての探偵の推理やその存在自体への疑念が露わになる。
 これはいわゆる「後期クイーン問題」というやつらしい(『オトナアニメディアvol.3』UN-GO特集ページより)。推理作家エラリィ・クイーンの後期作品からみられる、推理小説自体や探偵の在り方の限界についての問題。僕はミステリにはそれほど詳しくないのでこれ以上は言及できないけれど、興味ある人は調べてみると面白いだろう。
 第6話では、“小説家”の夢想する「物語/推理小説/ミステリ」を登場させることで、『UN-GO』の作中世界をその物語の外の現実として定義し、ミステリへのメタ批評をやってみせた、といえるだろうか。

 そして続く第7・8話では「現実と虚構」というさらに普遍的な物語論に突入することになる。
 だからミステリのメタ批評の側面ではこの第6話よりは深められないのだけれど、時間があればそこから辺もっと踏み込むつもりだったんじゃないだろうか。新十郎への「最後の名探偵」という言葉も、結局曖昧なものに終わってるし・・・。だから『UN-GO』二期をですねえ(ry 

   
・“小説家”はどこまで「書いた」のか
 で、ここからは第7・8話以降を視聴済みの人向けのネタバレ内容。
 以下反転。

 “小説家”が矢島に渡した本に押された麟六の蔵書印は、明言はされていないが、「別天王」の幻の力で作り出されたものだったのだろう。それをめぐる動向によって事件が起きることを狙っていた。それはいい。しかし、そもそも収監されている“小説家”の彼はどうして矢島家の境遇や本の暗号のことを知っていたのだろうか? 「知っていた」のではなく、「作っていた」のだとしたら・・・?
 “小説家”は「現実で小説を描く」と言った。別天王の力は、無いものを有るように見せる。今回の物語はどこまでが実話/現実でどこまでが彼の創作だったのだろうか? 矢島の人間関係を利用して、ただ蔵書印を偽造しただけか? 別天王の幻覚は本当はどこまで及んでいたのか・・・?
 それをふまえると、今回の物語全体の原案が「『安吾捕物帖』ではない別の短編」だという事実は、本来より深く重要な意味を持つのではないだろうか・・・。
 以上

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 追記:>後期クイーン問題
 ちなみに、エラリイ・クイーンは事件において犯人が誰かの行動を操作する「あやつり」のテーマを突き詰めた作家だったそうで。『UN-GO』第6話も、実行犯と探偵両者の行動が“小説家”の掌の上にあった、という高度な「あやつり」のエピソードだった。

   ***

参考資料
坂口安吾『恋愛論』1947.4
會川昇『UN-GO會川昇脚本集』株式会社スタイル 2012.4
小森健太郎「『攻殻機動隊』とエラリイ・クイーン あやつりテーマの交錯」『ユリイカ 』第37巻11号 青土社 2005.10
・『UN-GO』特集頁『オトナアニメディアvol.3』学研マーケティング2012.1

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テーマ:アニメ・感想
ジャンル:アニメ・コミック

tag:UN-GO 水島精二 會川昇 坂口安吾

Comment

こんにちは、「ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人」の管理人のピッコロでございます。いつもお世話になっております。記事とは関係のないコメントで大変失礼いたします。


お忙しい中、当ブログのアニメ評価企画に参加して頂き本当にありがとうございました。アニメ評価企画17の最終結果は、現在当ブログにて現在掲載中でございますのでよろしければご覧になって下さいませ。

評価企画17の最終集計結果↓
http://picoro106.blog39.fc2.com/blog-entry-6490.html

そして、今回も「今期終了アニメ(9月終了アニメ)を評価してみないかい?18」と題しまして、新たに評価企画を立ち上げましたので参加のお誘いに参りました。また、この企画に賛同して頂けるのであれば、参加して下さいませ。

なお、投票方法等についての詳しい事は以下の記事に書いておりますのでご覧ください↓
http://picoro106.blog39.fc2.com/blog-entry-6436.html


なお、最終的な締め切りは12月22日までになっておりますので、よろしくお願いいたします。

>ピッコロさん

遅れましたが、コメントありがとうございます。
> そして、今回も「今期終了アニメ(9月終了アニメ)を評価してみないかい?18」と題しまして、新たに評価企画を立ち上げましたので参加のお誘いに参りました。また、この企画に賛同して頂けるのであれば、参加して下さいませ。

今回も告知してくださり、大変有難うございます。
記事かコメントになるかわかりませんが、また参加させていただきます。

そうか、因果を使って語らせたら矢島は妻を殺してたのか
ネグレクト自体は事実だったんだから…
今まで気づかなかったとはorz

この作品、全編通して二重推理モノの魅力ももちろんありますけど、5,6話は新十郎が推理を外してることもあってやや安吾(あるいは會川氏か)の思想、観念的な色が強いですよね。実にいい。

ほんと二期やりませんかねえ、會川氏のTweetがなんか意味深ですが。

>loopさん

コメントありがとうございます。
返信遅れてすみません。

> そうか、因果を使って語らせたら矢島は妻を殺してたのか

新十郎の調査だけでも危なかったので、因果の言葉通りの「質問」が実行されてたら本当にアウトだったろうなあと。

> 5,6話は新十郎が推理を外してることもあってやや安吾(あるいは會川氏か)の思想、観念的な色が強いですよね。実にいい。

原作だと「結城新十郎」は完全無欠の紳士みたいなキャラなので、本作での新十郎のキャラづけや推理ミスは會川さんの意向が大きいのだと思います。
社会への風刺意識の面は、両作家に通じていますね。

> ほんと二期やりませんかねえ、會川氏のTweetがなんか意味深ですが。

やってほしいですね~
先日のコミカライズ版オリジナルエピソードについて、「今の段階での新作」とか言ってますけど、これは・・・?
非公開コメント

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江楠

Author:江楠
 
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