『屍者の帝国』/ほか最近読んだ本⑧

2013.03.25 14:43|
 久し振りの更新。・・・で申し訳ないですが、短めです。

 『屍者の帝国』『あらし』『青鬼の褌を洗う女』等の感想。
 あとで何か追記するかも。
 
 
   ***

・伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』

 死体に疑似霊魂をインストールして使役する「屍者」技術が発達した19世紀末。英国の医学生ワトソンは、屍者暴走の謎を追って世界中を駆け回る。その先に待つ、人類の真実とは。

 SF作家・伊藤計劃が死期間近に遺した序章とプロットを元に、円城塔が書き継いだ物語。
 『虐殺器官』では身体と精神を調整される世界、『ハーモニー』ではその果てに自我意識が消滅する世界が描かれ、そして死人を動かす世界の話が著者の没後に完成するとか、非常に不謹慎ながら出来過ぎてて笑えてくる。
 自分は伊藤作品はほぼ全て読破している一方、円城作品は全くの未読のまま本作に臨んだのは失敗だった。本作が伊藤の原案を元にしているとはいえ、大部分を書き進め終わらせたのは円城に違いないのに、彼の作家性の文脈なしに読むと伊藤計劃の延長線上でしか捉えられなかった。
 まあそれはそれとして、単品でとても面白い作品。仮想19世紀の文明社会を屍者が埋め尽くす光景は、想像するだに楽しくてたまらない。もし映像化企画が立ち上がったら、それができるのは、それこそ伊藤計劃の憧れたリドリー・スコットその人なのではないか・・・。
 (追記予定)


・ウィリアム・シェイクスピア『あらし(テンペスト)』

 現在放送中のアニメ『絶園のテンペスト』『ハムレット』とともにモチーフとしている、知る人ぞ知るシェイクスピア最後の単独作品。
 読んでみると、絶テンの設定や台詞引用の意味等に随分と納得がいった。
 アニメ絶テン最終回には、きっと「拍手の雨」を!
 本編内容については熟読後にはまたちゃんと感想を書くつもり。


・坂口安吾『青鬼の褌を洗う女』

 Twitterのやりとりから、青空文庫で読了。
 戦中・戦後を生きた女の醒めた視点で綴られる男女観と男遍歴。
 戦後文学版『だめんず・うぉ~か~』のような趣。

 主人公の女は妾として、久須美という男に身を寄せる。フォロワーさん曰く、彼が川上弘美『真鶴』に登場した「青茲」というキャラクターに重なるとのことだった。確かに、主人公と不倫関係にあること、彼女の奔放さを許して自分は身を引こうとする姿勢等は共通している。
 けれど、本作は明瞭直截な文体で女の彼への容赦ない見切りとともに描写されるのでその不憫さもより克明で、『真鶴』の一人称によって茫洋としたフィルターがかかっていた故の青茲のような解釈や美化の余地は無いように思った。同じようなキャラクターでも、描き方1つで随分変わるものだ。

 女が思索の果てに自分の生き方を見きわめるラストは存外清々したものがあり、ヘビーな話なんだけど読後感は悪くはなかった。ちょっとしみじみとする。
 ・・・なんだけど、全ては「ガッチリズム」「チャッカリズム」「我利我利ズム」なる安吾の謎の言語センスにかっさらわれて、その箇所からは爆笑しながら読んでた。あれは造語なのか、それとも当時実在した言葉なのか!?(少なくとも当時のご婦人はあんな言葉は遣わない気がするぞ)
 いずれにしても、どんな話も読んでて楽しいものにさせる坂口安吾はやっぱエンタメだなあと。「“文学”を読んでいる」という堅苦しい自覚をなくしてくれる。
 中盤で、女が男に処女幻想論を熱くぶたれその後別の男に心中をせまられるくだりなんかもう最高だったね。


・あずまきよひこ『よつばと!』

 12巻を買ったのを切っ掛けに、ほぼ全巻読み返してみた。
 初期と今とを比べると、絵柄やテンポがかなり違うのに驚く。本編は1年にも満たない時間を丹念に描いているけれど、連載はもう10年も経っていたんだ。
 巻を追うごとに、背景のこだわりが凄まじいことになっていて、でもその「凄み」を前に出さないで、むしろ読者が安心して浸れる画面に落ち着けている。
 12巻は、よつばとがペンキでつけた足跡をとーちゃんが「記念」と言って1つだけ残したり、夜中に眠るよつばを無言で見つめたり、巻の最後の頁がまるで最終回みたいだったり(「今日は何して遊ぶ?」)、何だか妙に感慨深さが強い巻だった。作者は、まだまだ先だろうけれど、なにげに話の終わりを見据えているんだろうか・・・。

 余談だけど、以前『金色のガッシュ!!』というバトル漫画があって、バトルとバトルの合間に主人公の少年ガッシュの日常エピソードが描かれていたのですが、あれは結構『よつばと!』に近い境地に達していたんじゃないかなーと今になって思う。


・原作:京極夏彦/漫画:志水アキ『狂骨の夢』第5巻

 百鬼夜行シリーズ三作目の、志水アキによるコミカライズ最終巻。
 前作『魍魎の箱』の時点で志水先生の手腕は素晴らしかったのですが、『狂骨』ではさらに京極世界を自家薬籠中のものにした感があり(デフォルメ絵にも躊躇いがなく的確!)、この5巻ではそれが極まっていました。
 話は深夜の寺での京極堂の憑き物落とし、そして朝日を迎える海辺でのエピローグなのですが、その黒白の対比が死ぬほど美しい! 暗闇での会話劇はベタが多用されて紙面が黒く、そして事件が終結して皆が光あふれる外に出ると一転、白けた背景が本当に眩しく感じる。京極堂たちが朝の浜を歩く見開き頁の清々しさ!
 そして最後の最後の朱美の叫びも、原作初読時に感じたカタルシスをこれ以上ないほど魅力的に表現していました。
 もう称賛の言葉しか出てこないっす。

 で、志水アキが次に挑むのが百鬼夜行シリーズ第一作の『姑獲鳥の夏』!! 遂にキター!
 ぶっちゃけ「あの場面」の映像化できるかどうかとか、そんなんもうどうでもいいんですよ(ていうかたぶん「アングル」の処理でわりと普通に成功すると思う)。とうとう志水アキの描く『姑獲鳥』が読める、それだけで感無量です。

   ***

 ほか、伊藤計劃『Runnning Pictures 伊藤計劃映画時評集Ⅰ』、藤田和日郎『月光条例』など。

  
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