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UN-GO各話感想④ 第7話-第8話

2013.01.03 16:26|UN-GO
 一体、人々は、「空想」といふ文字を、「現実」に対立させて考へるのが間違ひの元である。私達人間は、人生五十年として、そのうちの五年分くらいは空想に費してゐるものだ。人間自身の存在が「現実」であるならば、現に其の人間によつて生み出される空想が、単に、形が無いからと言つて、なんで「現実」でないことがある。
 (坂口安吾「FARCEに就て」より)

   ***

 予定じゃ11月に、おそくとも年内には各話感想記事は完了していたはずなのに。これが別天王の力か・・・!(違う)
 つーわけで第7・8話の感想です。

 ※事件の真相、「因果論」のネタバレあり
 
 
   ***

・第7話「ハクチウム」
 脚本:會川昇 絵コンテ:増井壮一 演出:清水久敏
 原案:『愚妖』(『安吾捕物帖』)『白痴』

・第8話「楽園の王」
 脚本:會川昇 絵コンテ:黒川智之 演出:黒川智之
 原案:『愚妖』『選挙殺人事件』

~あらすじ~ 
 矢島氏の事件の発端となった、民間刑務所の囚人・自称〝小説家”と面会する新十郎。
 〝小説家”の発する言葉によって現実は歪み、幻の世界が立ち現れる。
 そこは、映画撮影の現場。新十郎はカメラマンとして働き、出演する三人の女優と親交を深めていた。映画は架空の戦争を舞台にした物語で、女優達には戦争に対するそれぞれの想いがあった。
 新十郎の脳裏には、「謎を解け」との囁きが。
 そして、現実に殺人事件が発生する・・・。


・作中作中作

 各話感想①でも述べたとおり、『UN-GO』という作品は、明治初期と戦後を重ねた坂口安吾の原作を近未来に置き換えて、現代の時事も取り入れ・・・とただでさえ多重構造な作りだ。
 それがこの第7・8話のエピソードではさらにレイヤーが加えられ、その重層性は極限に達する。

 まず、別天王の力によって作品世界の中に幻の世界が作りだされる。新十郎はそこに囚われる。自称“小説家”が別天王を使って作る「現実に描く小説」の次なる主役に抜擢されたのだ。新十郎は現実には刑務所の囚人となりながら、そこを別の世界として認識し行動することになる。
 この実相は、当時「因果論」を観ていた僕にはすんなり呑み込めた。が、未見の視聴者の中には、本当に別世界に飛ばされたのかと混乱した人も随分いたようだ。まあ、その幻惑感こそが第7話の醍醐味だったろうから、むしろ最適な楽しみ方だったともいえなくもない、か? 「何が起きているのか」を考えるホワットダニット(what done it)的な。

 そして、その幻の世界では映画撮影が行われていて、新十郎はカメラマンという設定になっている。
 視聴者はこの第7話・8話で、①作中世界の現実、②別天王の見せる幻、③幻の中で作られる映画作品、という三重の入れ子の世界を意識することになる。

 小説/幻の中で制作されようとしている映画は、戦争の最中を舞台にした三人の女をめぐる物語。ストーリーは坂口安吾の代表作『白痴』が元になっている。
 その世界では近未来日本で起きた戦争は無かったことになっており、そのうえで架空の戦争の物語を撮っている。
 メインの三人の女優を撮りながら、新十郎は、彼女達の演技がバラバラであるように感じる。それは、戦争にまつわる科白の解釈が彼女達それぞれで違っていることによるものだった。新十郎はこれは映画なんだからと宥めるが、女優達は科白の意味を真剣に議論する。
 ある女は戦争に退屈な毎日の破壊と変化を求め、ある女は人々の罪が戦争によって裁かれることに慄き、ある女は愛する者との日常を奪う戦争を嫌っていた。
 (ちなみに坂口安吾は、たとえば『堕落論』の中では戦争で感じた思いを端的に述べている―――(けれども、私は偉大な破壊が好きであった。私は爆弾や焼夷弾に戦(おのの)きながら、狂暴な破壊に劇(はげ)しく亢奮(こうふん)していたが、それにも拘らず、このときほど人間を愛しなつかしんでいた時はないような思いがする。))

 新十郎「彼女達は、懸命に生きている。映画に賭けている」

 『UN-GO』というアニメ作品の中で、“小説家”が現実としての作品世界を自らの小説で上書きしようとする。さらにその小説の中で映画が作られ、女優達がその物語に真剣にのめり込んでいる。
 (アニメ[小説〈映画〉])。この三重構造で示されるのは、人間の飽くなき物語への希求だ。
 なぜ僕等はこうまで物語を求めるのだろう。
 そもそも、「物語」とは何だろうか・・・。


・別天王

 “小説家“が「現実に小説を書く」ためのツールとして使っていたのが、「別天王」という存在だ。

 第7・8話の放送と並行して、2011年11月19日から前日譚『UN-GO episode:0 因果論』が2週間上映された。
 「因果論」は新十郎の過去や因果との出会いが語られるとともに、別天王が初登場して物語の重要な役割を担っていた。第7・8話を理解する上ではかかせないエピソード・・・というわけでは実はなかったりする。
 別天王は、今回は、あくまで舞台装置としての役割に留まっているからだ。

 別天王の能力は、前述の通り、幻を見せること。別天王自身は意志や感情を露わにせず、誰か人間が所有者になって初めてその力は使役される。
 別天王の所有者が思い描いたことを言葉として発すると、別天王の力が発動し、その言葉通りの幻覚を対象者に与える。それは対象の知覚全てを支配し、言葉の内容次第では記憶や行動も所有者の意のままに操ることができる。
 その効果は(これは後の話数で語られることだが)別天王の放つ光と音を認識した者全てに及び、その場にいる者は勿論、例えばテレビ越しにでも力は発揮される。逆に言えば、能力発動の瞬間に居合わせなかった者には何の影響も与えられない。

 そんな力をもつ別天王は一体何者か。 
 因果は「別天王は神だ」と言うが・・・。

  
・事実、現実、真実

 そんな別天王の能力に絡めて、物語の意味を考えてみよう。

 まず、現実とは、辞書的な意味では「いま目の前に事実として現れている事柄や状態」、つまり事実のみで構成された世界だ。
 そして、別天王の幻で作る世界を“小説家”が「小説」と呼んだのは示唆的で、つまり別天王の能力とは「現実に物語を上書きすること」と言い換えても良いだろう。

 物語は、往々にして現実にはない絵空事、実在しない人物や事件を描く。フィクションだ。たとえ「ノンフィクション」の物語であっても、語る事実を取捨選択・強調している時点でありのままの事実からは一歩遠ざかっている。
 しかし、ならば物語とは何の意味も成さない全くの嘘偽りに過ぎないのだろうか。
 否。
 人はその絵空事にこそ強い思い入れを抱き、現実では叶わぬ事柄を夢想する。そこに事実性はないが、物語に込められる想いに虚偽はない。現実にAが存在しなくとも、「Aと思うこと」は嘘ではないのだ。
 そして、物語のなかでも、特に自分が抱える秘密や本心としてのただ一つの物語を、人は時に「真実」と呼ぶのではないか。
 だから人は、フィクション/物語を求める。自分の真実と呼応するものを探して。


・物語の果て

 別天王が問題なのは、そうして本来は人間個人の内面から生まれるはずの真実を、幻としてだがいとも簡単に捏造して人に植え付けてしまうということ。真実を隠して現実を秩序化する海勝麟六とはまた別のベクトルで、新十郎のスタンスとは真っ向から反する存在だ。

 別天王の能力は、現実を覆すわけではない。あくまでも事実性のない幻。現実に仮初の物語を上書きするだけだ。それでも、その幻に囚われた者にとってはそこが唯一つの現実となる。
 三人の女達もまた幻にかかって、自分を女優であると信じて映画に取り組んでいた。その想いは紛れもない本物、真実だったはずだ。
 そしてそこで起きた殺人は、その幻を破ろうとする者を排除するために行われたものだった。犯人にしてみれば、ただ自分の現実を、自分だけの真実を守ろうとしての行いだ。

 助けに来た風守の電気ショックによって目覚めた新十郎。別天王の幻は破れ、現実の世界がその姿を表す。
 映画撮影の現場はネットで仕切られた刑務所の運動場で、三人の女達は女優でなくそれぞれ罪を犯して逮捕された囚人だった。

 風守「今は、何が見えますか」
 新十郎「真実だろ」

 新十郎「『戦争はなかった』・・・。ここで謎を解けば、“小説家”の与えた夢は消える・・・」

 だから、今回行われる謎解きは、ミダマ開示で心の真実を導き出すことではなく、彼女達から(仮初のものとはいえ)夢と真実を奪い去ることに他ならない。
 新十郎は、せめて、完成した映画の科白として真相を解明する。
 女達はそれを読み上げ、映画というフィクションを達成することで自分を思い出し現実に回帰する。

 現実と切り離された虚構ではなく、現実を含んで完成する虚構。その先にある真実。
 この一幕は、會川昇という脚本家の、物語へのスタンスの表れであるように思う。

 會川「(中略)自分は作品を通して社会に一言物申したいわけではなくて、自分がいま生きていて、一歩家の外に出ればある空気をそのままアニメとか小説の中にふと流し込んだときに、やっと自分の作品ができあがるような気がするのです。(以下続)」
(「[座談会]UN-GOと探偵小説」『本格ミステリー・ワールド2013』より)


・敗戦探偵の帰還

 “小説家”は、新十郎を幻想世界に閉じ込め、永遠に自分だけの名探偵の役割を演じさせようとした。
 しかし新十郎は、もはや自分の居場所を夢の中や別世界といった「ここではないどこか」には決して望めないのだ。かといって彼には現実にさえも居場所はない。その理由は最終話で、そして「因果論」で語られる・・・。

 因果「結城新十郎に解けない謎はないのよ。たとえ自分の血をいくら流しても、彼は、必ず真実を、ミダマを私に捧げる」

 ラスト。新十郎は、後ろ首に付けられていた囚人管理用チップを無理やり剥がし、傷口から一筋血が流れる。
 このシーンも、「因果論」を観ていると意味がより重い。
 彼の「首」は、かつて真芯を貫かれて絶命しかかり、そして再生された。つまり、彼が死から生に呼び戻された証が宿る部位だ。
 そこから再び血を流し、結城新十郎は仮初の居場所=幻を捨てて、居場所なき現実に舞い戻る。 

新十郎「僕はね、ともかく、もうちょっと残りますよ。僕は逃げたいが逃げられないのだ。命のとことんのところで、自分の姿を見つめ得る機会には」
(原文:僕はね、ともかく、もうちょっと、残りますよ。僕はね、仕事があるのだ。僕はね、ともかく芸人だから、命のとことんの所で自分の姿を見凝(みつ)め得るような機会には、そのとことんの所で最後の取引をしてみることを要求されているのだ。僕は逃げたいが、逃げられないのだ。)/『白痴』より)

 そして、この現実における真実をめぐる最終章が始まる・・・。

 111140904_624.jpg

   ***

 ・・・うん、何書いてんだか自分でもさっぱりだ。
 ちゃんとした物語論の本なり論文なりを参照すべきだったなあ。いずれ改稿するかも。
 
 さあ、各話感想も残すところ⑤(第9話~第11話)と⑥(因果論)のみ。あとは、最後だからネタバレも自重せずに言いたいこと全部ぶち込めばいいので、早めに書けるんじゃないでしょうか。

   ***

参考文献
坂口安吾『白痴』『戦争と一人の女』『堕落論』(青空文庫より参照)
會川昇『UN-GO 會川昇脚本集』株式会社スタイル 2012.4
監修・島田荘司『本格ミステリー・ワールド2013』南雲堂 2012.12 
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テーマ:アニメ・感想
ジャンル:アニメ・コミック

tag:UN-GO 坂口安吾 水島精二 會川昇

Comment

No title

「ここではないどこか」って、會川さんの脚本に共通するテーマの一つですよね。
シャンバラもそうでしたし、十二国記ではその点をさらに強調するようなオリキャラが登場していました。
エウレカAOも、別世界を求め続ける人たちの闘争を描いていて、最もアレは状況が錯綜し過ぎてラストのアオがクオーツガンを使った意味合いが理解できてなかったり。あの作品は前作含め一から見ないとダメっぽいですね。

で、私は上記のようなテーマが今ひとつピンと来ないところがあって、実はUN-GOを面白いと思ったのもその文脈から離れた所でやってるなー、と思ってたからなんです。
でも、この記事を読んで、別天王の能力はもちろん、麟六が求める虚構による平和も「ここではないどこか」のテーマに繋がるのかなと考えました。それのアンチテーゼとして、ただひたすらに真実を求める新十郎、と考えるとようやく會川さんがずっと一貫して描こうとしていることが何となく分かったような気がします。アオのラストの決断も、そういう事ですしね。

続きも期待してます。 時間がかかっても納得のいくまで書いてくださいね!(プレッシャー)

>ぽんずさん

コメントありがとうございます。

> 「ここではないどこか」って、會川さんの脚本に共通するテーマの一つですよね。
そうですね、ほぼ毎回といっていいくらい手掛ける作品に登場するテーマだと思います。そして現実社会の要素を盛り込むのも特徴で、その現実に対照させるものとして並行世界や偽史などの「ここではないどこか」があるのかなと。
エウレカAO、実は僕も話をよく分かってないので、早く歯抜けになってた中盤の話数観ないと・・・(汗

> で、私は上記のようなテーマが今ひとつピンと来ないところがあって、実はUN-GOを面白いと思ったのもその文脈から離れた所でやってるなー、と思ってたからなんです。
思うに、『UN-GO』は「『ここではないどこか』を求めた後」を描く話なんじゃないかと。
前日譚の「因果論」における新十郎は、夢や理想としての「ここではないどこか」を追い求め、その結果その全てを失ってしまいます。そしてTV本編は、その後の新十郎の物語なんですよね。だから、この第7・8話であらためて別の世界を否定してみせたりして。
本作は會川さんのいつものテーマとは正反対なようでいて、実はその延長線上にあるものなのだと思います。
・・・まあ、これ以上は後の記事にてw

> 時間がかかっても納得のいくまで書いてくださいね!(プレッシャー)
ぐえー!
いや、まあ、今まででの記事で大分消化できているので、今度こそそれほど時間かからずに書けますよw
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江楠

Author:江楠
 
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