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ぐるりのこと。

2013.06.28 06:35|映画感想
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 2008.
 監督:橋口亮輔
 
  ***

 「ちゃんとね、ちゃんとしたかったの。」
 彼女は涙ながらにそう言った。
 
  ***
 
 1990年代日本。
 80年代後半からのバブルは早々に潰え、グローバリズムに手を出して本格的な海外進出に臨んでいた経済・企業は行き場を失くした。
 当初は低賃金な働き手を得るためだった身勝手で杜撰な入管政策による外国人労働者流入は今更止まらない。留学だバックパッカーだと未だ国外に夢を見出して飛び出していく若者たち。何度目かの国家の境界の融解。
 雇用はよりいっそう階層化し、それでも景気悪化は加速していく。95年の震災。暴走し自壊する現代宗教。電子空間の黎明。
 ばらばらに千切れ細分化しゆく社会で生まれる犯罪は動機が容易にパターン・モデル化できなくなっていき、“心の闇”という文字通りのブラックボックスに放り込まれる。
 成長神話のいよいよの終わり。失われた20年の始まり。ぼくの生まれ育った時代。
 

 そんな中を生きた、ある夫婦の物語。夫は法廷画家として被告人たちの貌を描き、かつてキャリアウーマンだった妻は子どもの死を切っ掛けに精神を病んでいく。人間のソト(社会)とウチ(家族、心)それぞれに去来するネガティヴ、虚無、支離滅裂が併せて映される。

 「ちゃんとしたかったの。」
 夫はただ妻に寄り添う。彼女のうつが悪化していくのは彼の所為ではないし、そしてそこから緩快していくのも事実上の要因は彼ではない(時間と、適切な治療と、自己実現)。
 それでも、うつに限らず苦しい時つらい時に当人がいちばん有難いのは(振り返ってそう思うのは)、そうしてただそばにいてくれたことだと思う。
 そして彼ら夫婦の周りを含めた家族もまた、ある集いをきっかけに何かが清算され、晴れやかさに包まれる。 

 一方で、夫がスケッチする社会は依然として悪意と悲しみの終わらぬ連鎖を生み続ける。物語が幕を下ろした後にもより混迷を深めた暴力の時世が待っている。やはりポジの総量よりもネガのそれの方が遥かに大きいように思われる。
 それでも、夫婦・家族の再生と彼らが身を置く社会の模様とが綯い交ぜになって映されてゆく終盤の一連のシークエンスに、そんな二項対立の無意味さ、「そうあるもの」としての人の世のままならなさ、泰然とした叙事性・・・そして一作品として時代を描き上げようとした監督の凄まじい胆力を見せつけられ、静かに息を呑む。何かを受け入れる。
 
 全ては流転しながら今に続いている。当然これからも。
 その、ほんのひと時の切り抜きだ。

  
 家族、社会、犯罪、裁き、芸術、愛。
 「すべて分け合うんだ。」

 
 

   ***

 追記:こんな、90年代を現在に連なる過去として描いた作品には、個人的にすごく興味があるというか、惹かれるというか。あの時代から丸々10年以上の時を経た今だからこそ、こういう映画をもっと観たい。

  
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