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真夏の方程式

2013.07.20 00:46|映画感想
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原作:東野圭吾
監督:西谷弘

 
   ***

 レイトショーにて鑑賞。予想外に遅くなって終電逃しました(白目)

 本作の制作を知ったとき、監督が『容疑者Xの献身』『アンダルシア』『任侠ヘルパー』の西谷弘という時点で、こりゃ木戸銭払って観る価値はありそうだと期待していたのですが、海に面した町が舞台でペットボトルロケットがフィーチャーされるとあっては、三重県のある港町を第二の故郷と決め、小学生の頃は休みの日に父親と一緒に近所の学校のグランドでペットボトルロケットを飛ばしていた自分は、もう観に行かないわけにはいかず。

 さて実際劇場に臨み、そんな自分の大好き要素はきっちり満たされていて、そして観終わって一息つくと、本作が一つの「夏休みムービー」の佳作として自分の中に印象づいていたことが、我ながらちょっと驚きであり、さらなる満足だったのでした。

 何が夏休みムービーって、別に本作の季節が夏で舞台が海だったから、っていう単純なことじゃなくて・・・。

   ***

 映画『真夏の方程式』、本作と軸となる事件と物語は、ある家族の始まりの秘密とそれを隠すために過去に行われてきた犯罪、そして現在の時間軸でまた家族の絆のために起きる殺人事件ををめぐるものだ。 
 シリーズの主人公たるガリレオこと湯川学は、環境開発のアドバイザーとしてその家族が暮らす町にやってきて、そこで起きた事件の解決に関わるうちに家族の秘密にもふれていく。
 犯人が愛ゆえに罪をおかし、湯川がそれに葛藤しながらも謎に引導を渡す・・・というストーリーは、ガリレオ映画前作の『容疑者Xの献身』を踏襲したものともいえる。


 しかし本作の物語の眼差しが真に通低して寄り添い、テーマ的にも最終的に行き着くのは、ある一人の少年の物語だと、僕は捉えた。

 家族がある秘密を抱えることになった出来事を描いたアバンの後、場面は夏休みで親戚の家に遊びにやってきた少年と湯川の出会いに移る。少年は電車でのトラブルを颯爽?と解決した湯川に魅せらるものの、一旦は彼と別れ親戚に迎え入れられる。その親戚こそがあの家族たちである。

 シリーズ前作『容疑者X』は、天才数学者の「愛する者を守るための」アリバイ工作のために、何ら罪もない無関係な者が犠牲になるという展開があった。それが、作品の「泣ける」「感動」といった歌い文句の中に一抹の影を落としており、むしろあくまでも犯罪を完全な純愛モノにすり替えていない誠意、引き際として存在していた。
 今作でもその要素は引き継がれており、少年は家族が今また犯す犯罪の近くに身を置き、さらには知らずにその犯行の片棒を担がされてしまう。犯人のその行いは、ある種の不可抗力といえ、はっきり言って吐き気を催すレベルの邪悪だ。
 そして、終盤で少年はその事実に薄々勘付いてしまい、途方に暮れて心を痛めるさまが克明に描かれる。何より、この映画は家族と同じくらいに少年の視点によるエピソードに時間が割かれており、その積み重ねこそが彼が犠牲にされてしまう悲痛さの根拠たり得ている。『容疑者』からの、どんな動機であれ犯罪に正当性はありえないという裏テーマが、今作ではより強く打ち出されている。

 そしてこれをより少年の立場に寄って考えると、「夏休み」という日常から少し解放された時間の中、自分の住む町から離れた地で、数々の興奮と一抹の罪悪感を体験し、かつての無知であり無垢な自分には戻れなくなり、それでも再び日常へと帰っていく・・・という、一種のイニシエーション(通過儀礼)の物語であることが分かる。
 この、一夏の体験で得るものと失うもの。その過程を等身大の視線で丹念に描き出すこと。それこそが、僕が本作を「夏休みムービー」と捉える要素だ。


 そして、そんな少年の体験に全編通して接するのが湯川だ。
 彼は、キャラ設定として、大の「子ども嫌い」だ。非論理的である子どもと会話するだけでジンマシンが出てしまうという。
 よって湯川は、本作で少年にも最初はひどく邪険な態度を見せる。しかし、少年の「科学が何の役に立つんだよ」ということばに触発されて、彼を啓蒙すべくペットボトルロケットの実験に臨む。
 このイベントも、事件に巻き込まれるのとは対照的な陽のイニシエーションとして、試行錯誤の果てに答えに至る歓び、楽しさを少年に体験させ、彼に成長を促す。というか、むしろこの実験で彼の好奇心が目覚めたことで、自分が事件に関わった真相に近付いてしまうのだが・・・。
 そうして成長することの明暗・功罪の狭間で少年が苦悩し、彼の「人生が捻じ曲げられてしまう」かもしれないからこそ、湯川は事件解決に奔走する。しかし結局は家族の確固たる絆の前に敗北し、少年は最終的に自分が無自覚といはいえ犯罪に加担してしまったことにはっきり気づいてしまう。

 物語のラスト、果たして湯川は傷つく少年に対して、「楽しかったな」と実験の思い出を肯定的にパッケージし、彼の気付いた真実については「一緒に悩んでいこう」と言う。また、それと前後して家族の犯罪によって守られたある者に、後の少年へのケアを託す。
 湯川が最初忌むべき「子ども」扱いしていた少年に極めて誠実に真摯に接するこのラストこそが、逆説的に、少年がもうただの子どもではないこと、何らかの成長、変化を遂げたことを分かり易く決定的に示している。(また、思うに湯川はひとくちに教授といっても「教育者」というより「求道者」としての気質が強いのだろう。前者であったならもっと率直な救いを与え教え導くような言葉をかけていた気がする)


 また、湯川が少年に対して残した一種愚直なメッセージは、序盤の環境開発についての言葉と重なって普遍性を持ってもいる。
 進歩・成長は必ずしも良い結果を招くものではないということ。現状を維持することにすら無用な犠牲が発生し得ること。そのうえで、人はトライ&エラーを繰り返し自分の責任で答えを「選択」していくほかにないのだということ・・・。

 このように、少年のひと夏の成長と喪失を非常に丁寧に描いた「夏休みムービー」として、『真夏の方程式』、激推しです。 
 
   ***

 あと、unuboredaさんのブログでのレビューがちょっともう凄いので、むしろこっちを絶対読んでください。本作と黒沢清『リアル』との繋がりとか、視点とフレームによる語りの解析とか。→原罪と、静かの海 - 『真夏の方程式』http://yosntoiu.exblog.jp/20468847/#20468847_1
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テーマ:映画感想
ジャンル:映画

tag:真夏の方程式 東野圭吾 西谷弘 福山雅治

Comment

子供の国が通過儀礼を経てしまったんだなということを痛感する映画でしたね
原作だと「原発のように」みたいな直接的な例えも出てくるんですが
それをカットして(せざるをえなくて?)それでもちゃんと現在の映画になっていて、
本当はもっと早くこういうことをして日本映画に今を刻んでほしかったのですが
『リアル』と本作でようやくちょっと胸をなでおろしました

今週は宇多さん、ちゃんと喋れるのかのほうが心配ですが。。。

>ヒノキオさん

コメントありがとうございます。

> 原作だと「原発のように」みたいな直接的な例えも出てくるんですが
> それをカットして(せざるをえなくて?)それでもちゃんと現在の映画になっていて、
あ、原作にははっきりあったんですね。でも今回の映画で削ったことでむしろ科学について普遍的な意味がでていたと思います。
まあ日本は、むしろ今までにも何度もイニシエーションの機会があったのにそれをちゃんと受容しないことを繰り返してきて、今度の震災からの諸々にしてもそうなんじゃないかなと・・・。

> 『リアル』と本作でようやくちょっと胸をなでおろしました
リアルは、他の人のレビューでやっと3.11に関わる表現だったと気づいたのですが、それほど自分があの心象風景描写を当たり前に受け入れていたことにちょっとゾッとしました。

> 今週は宇多さん、ちゃんと喋れるのかのほうが心配ですが。。。
ハテ、何かあったんでしたっけ? 実際、ポッドキャストで聴いたら妙に歯切れ悪かったですが・・・
それでも、湯川の少年へのメッセージと環境開発のテーマのリンクにしっかり触れてくれたのは嬉しかったです。

『土曜日の実験室』、いわば「ウィークエンドシャッフル」のベースの概念もいち早く共に曲にした
キエるマキュウの盟友マキ・ザ・マジックが急逝してしまったのですよね
近年のライムスのプロデュース、
中でも『ComeOn!』内でのマキの「ディス・イズ・HIPHOPド真ん中さ!」って言葉が
『マニフェスト』の中で一番泣けるんだって宇多さん言ってたの思い出したりして、
死因も不明なので、宇多さんがって言うか、
自分がどうリアクションしていいのかまだよくわからないキョトン状態なんす

>ヒノキオさん

ああ、なるほど・・・
そっち界隈を全然チェックしていなかったので、思い当たってませんでした。

先日のポッドキャストのトーンの下がりようはおそらくそれだろうなあ・・・

自分としても、こういう時は何をどう言ったらいいのか、言葉に詰まりますね。
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江楠

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