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“死”の希釈、あるいは濃縮 ①-『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

2013.10.30 02:55|映画感想
 『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]反逆の物語』を観てきました。ツイッターで「『そして父になる』見るー」とか呟いてたのは誰だ。

 その2作について、ジャンルやスケール、リアリティラインなどは何もかも異なりながらも、「死んだ・いなくなった者への想い」という点でかろうじて共通し、そしてそのアプローチの仕方においてかなり対照的になっているなあと。
 そこら辺を軸に、それぞれの作品感想を書いていきたいと思います。まどマギのネタバレに考慮して、記事としては作品ごとに分けます。だからまああくまで別個の感想ですね。

 まずは『あの花』について。
 
   ***

 『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

 原作:超平和バスターズ
 監督:長井龍雪
 脚本:岡田磨里
 キャラクターデザイン・総作監:田中将賀
 キャスト:入野自由、茅野愛衣、戸松遥、櫻井孝宏、早見沙織ほか
 制作:A-1 Pictures
 2013年アニプレックス配給

   ***
 
 本作は、TVシリーズ本編から1年の時を経た超平和バスターズの面々が、めんまに手紙を書きながら当時のことを振り返る・・・という体裁で、TVシリーズの物語をダイジェスト的に映していく。
 よくあるアニメの総集編映画、と言ってしまえばそうなのだが、この構成自体が本作のテーマとリンクし意味を成すという、かなり巧みなつくりになっている。

 そもそも『あの花』TVシリーズ自体が、「回想」を非常に重要な要素としている物語だ。

 かつて、6人の小学生の少年少女は“超平和バスターズ”を名乗り仲良く遊んでいた。しかし、ある日突然メンバーの一人の少女・めんま(本間芽衣子)が事故で命を落としてしまう。それを切っ掛けに彼らは疎遠になっていく。
 時が過ぎ、皆が高校生になった頃。バスターズのリーダー格だったじんたん(宿海 仁太)は鬱屈した引き籠りになっていた。そこへ突然、幽霊となっためんまが現れる。彼はめんまの抱える「お願い」が何なのかを突きとめ叶えるために行動する。そして他のバスターズの面々もまた、じんたんと再会し彼の奔走に付き合うなかで、それぞれのめんまへの想いに、あの幼少期の日々に向かい合うことになる・・・。

 作品の描写は、彼らの世代特有の人間関係の生々しさや子ども文化の小ネタ(ゲーム、アニメetc)を描き出すことに並々ならぬ力を注いでおり、それが10・20代の視聴者の共感を呼び、あるいはそれ以上の年代の人々のノスタルジーを刺激し、2011年深夜アニメのなかでもトップクラスの人気作となった。 
 つまり『あの花』とは、十代半ば過ぎの少年少女が近過去の幼少期を回想していく物語であり、その行為を始めさせ話を動かす役割として、近過去から生み出された幽霊として、めんまというキャラクターは在った。

 そして自分は、1年半ほど前に『あの花』TVシリーズについてこんな感想記事を書いていて。
 http://ex555weblog.blog.fc2.com/blog-entry-28.html

   *

 物語のラスト、少年少女の抱える記憶の幻肢痛が極限に達し、しかし同時に全員に共有されることで、痛みが作りだした幻影は希釈されて、消え去る。
 そして彼らは、やっと前を向いて、それぞれの時間を歩き出す。
 痛みは止まる。

 しかし。
 彼らの年齢を通り過ぎて間もない僕は、彼らがこれからもっと切なくやりきれない思いに直面することを知っている。
 なぜなら。
 人が自分の半生の記憶を思い返してより切ないのは、幼少期ではなく彼らにとっての“今”である十代半ば過ぎの時期だからだ。


   *

 だから、この劇場版が1年後の彼らがTVシリーズ当時を回想するものだと知った時、自分としては願ったり叶ったりだったわけだ。
 幼少期のあの日々を振り返っていた日々をさらに振り返る―――。
 思い出の上にまた思い出を重ねて、そうして地層のように積み上がっていく時間・過去というものをこの映画は分かり易く見せてくれている。
 劇中であなる(安城鳴子)が幼少期のじんたんへの想いを再燃させて彼に迫った1年前のことを思い返して身悶えするシーンが、特に象徴的だ。

 さらに、その過去の多重化はバスターズの5人それぞれの中で別個に起こっているというのも重要だ。
 繰り返しになるが、この映画は1年後の5人が当時を振り返っているという形式だ。TVシリーズでは複雑に絡み合っていた5人の物語が、一人一人のモノローグで彼らそれぞれの物語として区分して語り直される。(この、群像劇としての『あの花』の側面については、unuboredaさんがブログで的確に考察されているので、そちらを参考にどうぞ➝いびつなロケット13号-車輪としての映画、車輪としての群像劇 -『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
 そして、バスターズの過去がそれぞれ多重化していくにともなって、その過去に含まれるめんまの死もまた全く共通のものではなくなっていく。
 それは単純に彼らがめんまのことを忘れていくということではなく、彼女への思いは1年前に表に暴発した末に荒療治気味に昇華され、これからは穏やかに各々の内面に浸透していくのみだ、ということ。
 というか、元々バスターズの5人のめんまへの関係性や心情は各人違うものだった。だからこそ、彼女の死を契機に、それぞれの想いを抱え込んだまま彼らは離散してしまった。
 それがTVシリーズのラストにおいて、超平和バスターズが衝突・混乱を繰り返して本音をぶちまけた末に「めんまが大好き」という心情を皆が共有した時、じんたんんにしか見えていなかっためんまの姿が他のメンバーの目にも映るようになる。  
 そしてめんまは消える。

 めんまへの気持ちが一つになった一瞬、彼女の虚像を皆で見たあの一瞬を折り返し地点として、バスターズはまたそれぞれの現在を歩んでいき、そこから振り返る過去もまたそれぞれのものになっている。物語での役目を果たしためんまというキャラクターは個々人の中で分かたれ、もう一つになることはない。それを端的に示すのが、これまた1年後のあなるが彼女への想いの吐露に一人で苦心するエピソードだろう。
  
 だから、1年後の彼らの集いに、めんまはもう幻としてさえも現れない。1年前の再現をこころみてぽっぽが提案したかくれんぼは、ぐだぐだになって終わる(かくれんぼの前の彼らのあの間延びした空気感がたまらない)。代わりに、あなるからじんたんへの想いが再三募るという現在の物語がささやかなクライマックスを迎える。

 皆、未だめんまへの想いを引き摺りながらも、1年前よりは確実に自分の中で消化しつつあり、否応なく現在を生きていく。
 そうして根本的にはばらばらでありつつも、それでも、時たまには5人そろって集まり、ずっと仲良し。めんまがかつて仲良しということを「お団子」ではなく「ご飯粒」に例え、それが続いていくことを願ったように・・・。


 こうしたことをふまえて自分は、冒頭の言葉に戻るが、『あの花』は死者への想いを希釈していく過程を描いた作品だと思うのだ。
 そしてその希釈の現在進行形を描いた映画として、この『劇場版 あの花』を観られたことを喜ぶ。かなりギリギリだったが、「今」観ることができて本当に良かったと思う。
 
   ***

 さて、『あの花』は、物語やリアリティとしては現実に軸足を置いたものではあるが、人の死の受け入れの理想化という意味では、(幽霊要素とはまた別に)ファンタジーになったとすら言える。
 では、同じく十代中頃の人間が、大切な友達の死を受け入れられず諦めきれず、その想いをひとりで抱え込んで際限なくこじらせてしまったら? 死を希釈するのではなく濃縮してしまったら、何が起きるのか―――?
 そんな物語としての『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』を次の記事で考えようと思います。

   ***
 
 追記1:過去は多重化されるとともに美化される。切実さはだんだんとソフトなものになっていく。この劇場版で、TVシリーズ当時の本当にキツい場面は映されていない。めんまの母・イレーヌの「ふざけてるわね」、最終回のバスターズの愁嘆場でのぽっぽの慟哭・・・。
 
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テーマ:映画感想
ジャンル:映画

tag:あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 長井龍雪

Comment

劇場版あの花、現象也もしばらく前に観てきましたよ。
よくある再編集物かと思いきや、TVシリーズから1年後を舞台にめんまへの手紙を書く過程を通して、それぞれのキャラの追憶や思索、受容といった内面の動きが見られていい作品でした。
ファンが知りたかっただろう、幼少時代とTVシリーズ後を上手く補完していたと思います( ゚ー゚)

とか言ってますけど、現象也は開始15分から最後のエンドロールまでずっと大泣きしていたので、ろくに内容を覚えてませんww

まどマギは今度観てきますよ(^-^)/

Re: 現象也さん

コメントありがとうございます。

> よくある再編集物かと思いきや、TVシリーズから1年後を舞台にめんまへの手紙を書く過程を通して、それぞれのキャラの追憶や思索、受容といった内面の動きが見られていい作品でした。
今、劇場で観る意味をしっかり感じましたね。
色んなアニメ総集編映画観てきましたけど、その中でかなり上位です。

> とか言ってますけど、現象也は開始15分から最後のエンドロールまでずっと大泣きしていたので、ろくに内容を覚えてませんww
10月末ではさすがに劇場も空席が目立つ状態でしたが、公開直後は雰囲気すごかったんでしょうね・・・。だいたいの感想が「泣いた(人がいた)」でしたから。
僕はまたTVシリーズの時と同じく限界まで距離置いて観てしまって、またこんな分析的に感想書いてしまいました・・・w 何をそんなに怖がってんだか・・・

> まどマギは今度観てきますよ(^-^)/
まどマギ、まあ例によって賛否が激しく分かれるとは思いますが、何とか楽しんでいってくださいw
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