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『甘々と稲妻』第1話「制服とどなべごはん」・感想

2016.07.09 00:49|甘々と稲妻
  
 「たべるとこ、みてて」
 
 
   ***

 原作にハマっていて、今期アニメでは真っ先に視聴。
 
 冒頭、つむぎの髪の毛がうねうね動く様にハッと目を啓かれる。原作の止め絵では意識できていなかったモーション。
 そして幼児のぺたぺたした足音やご飯粒が触れ合う粘っこい音、ものを食べる時の咀嚼音等の細やかな音響。キャラの体重を感じさせる姿勢の描き方、ちょっとした挙動も拾い上げる仕草描写、といった比較的シンプルながらも丁寧な作画。つむぎ役の子の天真爛漫な演技を中心に据えての他キャスト陣の落ち着いた芝居。
 絵も音も演出も全てが微に入り細に入り丁寧に作り込まれ、かつ過剰な印象はないシンプルな仕上がりに、「良いアニメ化だなあ」と自然に思わされた初回。

 そしてこのアニメ版の繊細な作りが原作からある意味原作以上に描き出し得たのは、物語序盤の公平とつむぎのさりげなくも危うかった家庭状況とその再生である。

 大塚公平は妻に先立たれ、娘のつむぎと二人暮らし。料理が上手だった妻に対して公平の腕は壊滅的で、日々の食事はコンビニ惣菜やレトルト食品、あるいは外食となっている。Aパートでの公平がレトルト食品を扱う時のぞんざいな手つきと、それを手製のように見せて作った弁当が彼の「食」観を物語る。つむぎは公平の提供する食事を文句も言わずにいただくが、毎回完食はできずに残してしまっている。

 そんな日々に転機が訪れる。
 ある日二人は花見に出かけ、重箱詰めのおにぎりを泣きながら食す女子高生・成田小鳥に出くわす。彼女の母が営む料理屋の名刺をもらった後日、帰宅した公平はある光景を目撃する。
 視聴者には最初、買ってきた弁当がアップで映され、そこから横にパンして料理番組がかかるTVにかじりつくつむぎの姿が露わになる。非常に示唆的なカット。そして公平もようやく気付く。自分がいかに娘の食事というものを蔑ろにしていたかを。
 彼は勿論娘を愛していて、保育園にも通わせて身なりもきちんとさせて、やれることは十分やっていた。その上で、それでも届かない・気づけないことが積み重なっていた。それはなまじ単にダメな親として描かれるより余程遣る瀬無いものがある。

 公平はつむぎに「おいしいごはん」を食べさせるために小鳥の料理屋「恵」に走る(ここで一瞬、暗い裏路地を店の提灯に導かれて進む公平の主観ショットが挟まれる。現代ものである本作の中で異質なそのワンシーンは、辛い現世から逃れ異界に救いを求め彷徨うお伽噺のようである)。
 果たして店に居たのは店主ではなく小鳥のみ。料理の覚束ない彼女が土鍋ごはんに四苦八苦している間の二人の会話。
「ごはんたべるのひさびさねー」
「ごはんは食べてたろう」
「えっと・・・おとさんといっしょにたべるのひさびさねー」
 ここに公平の気づきの2回目がある。
 それまで家という一緒の空間の中でつむぎに食事をさせてはいたが、つむぎにはTVを見せながら食べさせ自分はその間に家事、といった風に、本当の意味で食事を共有できてはいなかった。そのことを「そうだっけ・・・」とおぼろげにしか思い当ることができないほどに、彼は大事な一人が欠けた生活に追われ、きつい言葉を遣うなら、つむぎをネグレクトしかけていた。
 そして小鳥がどうにか完成させた土鍋ごはんに二人はやっとくありつく。

 「おとさん、うんまあ~い!」

 つむぎの感激の声。それまでも彼女は中の人のリアル子ども演技も相俟って非常に感情豊かなキャラクターとして描かれてきたが、土鍋ごはんを食べた直後の彼女は声帯の震えまで感じさせるほどの本当に感情のこもった反応を見せる。演技的にも、「そこ」が最高潮のものとして設計されている。逆に言えば、それまでがむしろ抑制された子どもらしさだったかのように。
 そして続いて発される「たべるとこ、みてて」の科白に公平は涙する。ここに全てが結実している。つむぎが求めるもの、それが「おいしいごはん」であることは勿論だが、「家族といっしょに」食べる「おいしいごはん」にこそ彼女は飢えていたのである。そしてそれは、公平自身も。

 母を亡くした少女とその父に足りなかった「ごはん」がようやく満たされた第1話。
 そしてそれを仲介した女子高生もまた、彼女の中の何かを満たすべく、彼らにこれからも「私とごはんを作って食べる」ことを持ちかける・・・。

 以上の、非常に感動的なスタートを切った本作。それは冒頭に評したように、作品世界の細部から全てを掬い上げるような盤石な演出なくしては為し得なかった達成である。
 この幸福なアニメーションが最後まで続くことを願って、本作の視聴を続けていきたい。
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江楠

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