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逢魔が時の君と遊ぼう――『鬼滅の刃』

2017.01.16 19:20|
 週間少年ジャンプで今最も熱い(と個人的に思っている)作品『鬼滅の刃』。
 第45話時点での全体的な感想です。

 kimetu.jpg
 

   ***

 時は大正。
 竈門炭治郎は山に暮らす貧しい一家の長男として日々を懸命に生きていた。しかしある日彼が留守をしている間に家族は惨殺され、ただ一人生き残った妹の禰豆子は人の血肉を求める“鬼”と化してしまった。妹を元に戻す術を求めて、炭治郎は鬼を探し退治する集団“鬼殺隊”に入ることとなる・・・。
 以上が本作の大まかなストーリー。

 この漫画の魅力はまず何かというと、作者の読み切り作品時代からのの非凡な個性はそのままに王道のジャンプ漫画としても成立しているという、かなり危なっかしいギリギリのバランス感覚である。
 それこそ序盤は作者の持ち味とジャンプ作品としての枠が上手くかみ合わずぎこちない印象を受けた。けれど話が進むにつれてその齟齬は解消されていき、第14話以降メイン登場人物が揃ってきた辺りからは完全に本作独自のテンポが構築されたように思う。
 
 「そしてちょっと申し訳ないけど手の目玉気持ち悪いな!! 申し訳ないけど!!」

 誰も彼もエキセントリックなところのある登場人物達、妙に印象に残る頓狂な科白回し、それらが異能バトル漫画の骨子の中で繰り広げられるという異化効果。例えるなら『ジョジョ』のような・・・というか、人を喰らう化け物に呼吸法と太陽の力による武術で立ち向かう、というコンセプトはまんま『ジョジョ』だ。
 そんな、異形のジャンプ漫画としての魅力。

 そしてここからが本題だが、そうした刺激的な面白さに加えて本作の中核にあるのが、主人公・炭治郎が元は人間だった鬼達を斬っていく中で描かれる哀愁である。
 炭治郎は鬼になってしまった禰豆子をそれでも大切な家族として護り、彼女を人間に戻すために奔走する。それ故に、彼は鬼をただの化け物だとは割り切れない。鬼殺隊の一員として問答無用で殺すべき他の鬼達にも感情移入し、その心中を思い遣る。

「あの目・・・ 優しい目 透き通るような
 人間だった頃 誰かに・・・優しい眼差しを向けられていたような気がする」


 鬼達もまた、炭治郎に心を向けられながらも刀を振るわれるその一瞬、人間であった頃の記憶や感情をフラッシュバックさせて「人」として息絶えていく。
 この、人と鬼の情感が交錯する刹那の描写が、本作の真の醍醐味と言える。
 そしてここを軸に鬼達の描写を見つめ直すと、ぼんやりと浮かび上がってくるものがある。

 鬼は皆共通して強大な身体能力・回復力を持っている。人を喰らうほどにその力は増してゆき、その先でそれぞれ固有の異能“血鬼術”を獲得する。鬼血術の能力は鬼によって多種多様であるが、これまで描写されたもののいくつかにはある共通点が見えてくる。それは、子ども達の遊戯や伝統的な芸能を含めた、広義での「遊び」。

 例えば、「影踏み」のように影のごとき沼に人を引きずり込む沼鬼、「手毬」を弾丸のように投げつける朱紗丸、「鼓」を鳴らして空間転移を行う響凱のように、鬼が血鬼術に用いる道具やその在り方には「遊び」のモチーフが強く関わっている。それは鬼達が人間であった頃の思い出や生業が元になっており、彼らに最後に残された人間性の証であり、それを殺戮の術にしてしまっている悲哀の表れでもある。

 特に印象的なのが、最新5巻に収録されるであろう「那田蜘蛛山篇」での鬼の能力である。
 本来群れないはずの鬼達が「家族」としてまとまって炭治郎達に襲来してくる。その真相は、累という鬼が他の鬼を改造し自分の家族として振舞わせていた、というものだった。
 累はかつて鬼になった直後、家族に殺されかけて返り討ちにした。それ以来彼は家族という在り方を欲し、鬼達を無理やり家族に仕立て上げることに執着してきた。つまり、今回の鬼の能力が擬えているのは家族ごっこ=「おままごと」だったのである。
 作品設定と話のテーマが最大限に噛み合って言い知れない切なさを生んだ、珠玉の一篇だった。

「殺された人たちの無念を晴らすため これ以上被害者を出さないため… 
 勿論俺は容赦なく 鬼の頚に刃を振るいます 
 だけど 鬼であることに苦しみ 自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない
 鬼は人間だったんだから 俺と同じ人間だったんだから 」


 そうした彼ら鬼達に全力で立ち向かい僅かな救済をもたらす炭治郎は、禰豆子にとってだけでなく、鬼にとっても人間としての自分達の遊び相手をしてくれる「お兄ちゃん」なのだろう。
 そして炭治郎自身も、鬼達の首魁であり自分の家族を手にかけた張本人“鬼舞辻無惨”を追いかけるあべこべな「鬼ごっこ」の最中である。
 この命をかけた遊戯の物語を、最後まで見届けていきたい。
 
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江楠

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