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越境者たちの夜明け 『アトミック・ブロンド』

2018.03.12 23:46|映画感想
 去年に劇場鑑賞して、円盤が出たので改めて鑑賞。
 
 
 再見して、やはり本作の独特の寂寥さに感じ入ってしまった。
 シャーリーズ・セロン姐御の何から何まで格好良い立ち居振る舞いにシビレまくる正調のスター映画でありながら、常に何ともいえない物寂しさが充満している。
 それは何か。

 ベルリンの壁崩壊直前の1989年ドイツ。
 世界情勢に関わる重要機密が記されたリストを追って、スパイ達の諜報戦が繰り広げられる。まずは、この舞台設定が全てだったと思う。
 シャーリーズ・セロン演じる主人公ロレーンふくめ、スパイ達は壁で分断された東西ドイツを何度も行ったり来たりする。任務のためとはいえ、彼らは本来隔てられた二世界を人知れず自由に往還する。そして国境線のみならず、身分を偽り社会に潜入する。ある者は二重スパイとしてMI6やKGB等の陣営間も渡り歩く。地理上の境界、組織上の境界、そうした広義での「境界を超える」描写が随所に散りばめられている。
 そしてそこに彼らの越境を妨害する敵対者が立ち塞がる。それを突破するためのアクションが、サスペンスが生まれる。そうして本作は「スパイ映画」として成立していく。「スパイ」と「境界」は不可分なものとして描かれている。

 そして、劇中で1989年の11月9日がやってきて壁は崩壊する。
 ここでスパイ達は「冷戦の終わり」という時代の節目に立ち会うことになる。スパイをスパイたらしてめる境界の象徴が無くなってしまう。科白や演技で明示されてはいないけれど、そこには確かに一時代の終焉を愁う「祭りの後」感が映されていたと思う。
 そんな中、一つの場所・一つの陣営に愛着を見出してしまったある人物は敗北する。

 「俺はベルリンを愛してる!」
 
 対して徹頭徹尾自分だけを信じ続けたロレーンはどんな者からの裏切りにも立ち向かい、勝利を収める。
 時代の境界を越えることができたスパイ、できなかったスパイ。
 その差異から生まれる哀愁を焼き付けた映画として、自分はたぶんこれからも本作に惹かれてやまないだろう。
  
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