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『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』感想

2018.11.27 00:09|映画感想
 魔法生物フリークのニュート・スキャマンダーのが臨む次なる冒険。
 話のテーマが自分のツボにぶっ刺さりました。まさかこのシリーズで『劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』を観た時と同種の感動を覚えるとは思っていなかった。
 以下感想。
 
   ***

 前作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では、1920年代アメリカを舞台として、やがて闇の魔法使いが君臨する未来を控えた米魔法世界の情勢を第一次世界大戦から第二次世界大戦への戦間期である現実に擬えていた。そして魔法使いとノーマジ(非・魔法使い)の対立や迫害される闇の魔法生物を人種差別のメタファとして描いた。こうしたコンセプトだけでも十分示唆的であったが、それが今作ではよりテーマ的に踏み込んだ物語が展開していく。

 今回の舞台は1927年パリ。現実の歴史で当時のフランスは「狂乱の時代」「ジャズ・エイジ」等と呼ばれる激動の最中にあった。WW1を経て経済的・文化的に振興していく社会では新しい価値観が次々と生まれ、人々は自分のアイデンティティを意識的に模索するようになった。女性解放運動や性的マイノリティへの注目が強まったのもこの頃からだ。
 一方でそうした進歩と並行として、欧州の国際協調の水面下でファシズムが浸透していく時代でもある。イタリアでローマ進軍を果たしたファシスト党が保守派も呑み込んで議会を掌握していく。ドイツでは伊を手本としてヒトラーのナチ党が1923年にミュンヘン一揆を起こす。そしてフランスでも極右・反ユダヤ主義の拡大が進んでいた。こうした世相を背景として本作は成立している。

 そして本作は闇の魔法使いグリンデルバルドがアメリカの魔法界から脱出してパリにやって来るところから始まる。純血主義を掲げノーマジ迫害を目論むグリンデルバルドは、当時のヨーロッパに蔓延していく時代の暗闇を擬人化したようなキャラクターだ。本作は何といっても彼の悪役としての造形がずば抜けている。
 『ハリー・ポッター』シリーズの悪役であるヴォルデモートは、強大な魔法力と恐怖で人々を強制的に従える存在だった。対してグリンデルバルドの真骨頂は力そのものにではなく弁舌による人心掌握術にある。彼は人々が内心に抱える孤独やコンプレックスを刺激し、そこから彼らが自らの意思で自分の勢力に加わるように仕向けるのだ。
 今回、主要登場人物からある二人がグリンデルバルドの軍門に下る。恐ろしいのは、彼らがどちらも生まれや個性を否定される恐ろしさを当事者として分かっており、自分達を愛し時には過ちを止めてくれるパートナーもいたということだ。にもかかわらず彼らはグリンデルバルドの方へ誘われてしまう。あなたの痛みは分かる、あなたは正しい、間違っているのは奴らだ――。自分に無条件の肯定と正当性を与えてくれる存在はそれほどまでに甘美だ。
 そしてグリンデルバルドはそうやって自分の元にやって来た人々を集めて演説をぶち上げ、彼らの悪感情を一気に爆発させる。この集会の場面は鳥肌ものだ。彼の一挙手一投足全てが集団心理を的確に煽り、魔法省の追っ手をも利用して自分達の正しさと戦うべき敵を演出してみせる。そしてWW1以後急速に発展していく現実の戦争文明を魔法族にとっての「未知の脅威」として見せることで、その恐ろしさを重々知っている観客にも確かな説得力を以って迫ってくる。

 実際、グリンデルバルドが扇動した状況は現実の歴史における1920年代のファシズム台頭の似姿であると同時に、何より今また現代社会で進行する不和と猜疑を映したものに他ならない。彼はこの時代にこそ向き合わなくてはならない悪の象徴としても描かれているのだ。
 現実の1920年代末から世界が大不況とWW2という暗黒の時代へ突入していったように、本作のクライマックスでもグリンデルバルドの醸成した社会不安が一か所の集会から魔法界全体へと広がっていく。その決定的瞬間を目撃してしまった人々の絶望の表情があまりにも見事に捉らえれており、脳裏に忘れがたく焼き付けられる。

 そうして物語がダークな局面に向かっていくからこそ、ニュート・スキャマンダーというキャラクターが作品の主人公として意味を持ってくる。
 彼はグリンデルバルドとは逐一対照的な人物造形が為されている。彼は言葉が巧みでないどころか普通のコミュニケーションもままならないほど口下手で、話題は思い入れる魔法動物の事ばかり。どこかの陣営に属すことを好まず、常に自分本位に行動する。しかしだからこそ彼はどんな状況にあっても自らのやるべきことを見失わず、数多の魔法動物に接するのと同じように誰の痛みにも分け隔てなく寄り添うことができる。彼が劇中である人物を計2回抱きしめるが、その意味合いがどう変化するか、そしてグリンデルバルドの抱擁とどう対比されているかを劇場で確かめてほしい。
 そして自分の記憶が正しければ、ニュートは前作も含めて作中で魔法を誰かを傷つけるために使った描写は一度も無かったはずだ。彼は敵を打ち倒すのではなく、ただ味方を護り抱きしめることに重きを置く。そんな彼のもとに同じく趨勢に立ち向かう人々が集い、闇への誘惑を確かに断ち切ってみせる。
 勇猛果敢なグリフィンドール出身のハリーとはまた違った温和博愛のハッフルパフ型の主人公として、ニュートは希望を以って描かれている。時代の流れに呑み込まれるな、抗うことを諦めるなとこの映画は叫んでいる。 
 終盤、戦いの負けが決した後になっても彼が少しでも被害を抑え込むために仲間達と力を繋いで必死に杖を振るうシーンで、気づけば涙が止まらなくなっていた。

 ***

 ・・・とまあ辛気臭い感想になったけど、それはそれとして前作同様エディ・レッドメインという超イケメンの奇行(羽根の臭いを全力で吸引、石畳を舐める等)が堪能できたり、ミドルエイジ・ダンブルドアの腰つきがエロ過ぎたり、このBLがしんどい2018優勝的なCPがあったりとしっかり(?)エンタメしているので、是非皆観に行ってください。
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江楠

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