タマフル THE MOVIE 暗黒街の黒い霧

2012.04.08 19:36|映画感想
「虚」も、「実」も
『タマフル THE MOVIE 暗黒街の黒い霧』

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監督・脚本:入江悠
キャスト:宇多丸、古川耕、しまおまほ、橋本吉史ほか
企画・製作:TBSラジオ&コミュニケーションズ



 ↓以下、重大なネタバレってほどでもないけど本作を120%楽しみたい人はまだ読まない方がいいよという程度のあらすじ&レビューです。

   ***


 いやー、買っちゃいましたよ。
 近くの店で売ってないのでamazonで注文しましたが、よく考えたら、先日の池袋遠征のついでに新宿の紀伊國屋書店のタマフルコーナーで買えばよかったんだよな・・・。


 さて、本作のレビューの前に、「タマフル」を知らない人のために一応説明しておきましょう。

 TBSラジオ毎週土曜日午後9時30分から放送されている音楽情報番組「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」。タイトルの一部をとって通称「タマフル」です。

 番組公式サイト→http://www.tbsradio.jp/utamaru/index.html

 メインパーソナリティを務めるのは、HIPHOPグループ「RHYMSTER」のMC・宇多丸
 構成作家・古川耕。番組プロデューサー(現在)・近藤夏紀。ディレクター・小荒井D。アドバイザー・妹尾匡夫。コーナーレギュラーに漫画家/コラムニスト・しまおまほ

 日本語ラップを中心とした音楽をDJプレイで紹介する「申し訳ナイト」(現在はDisco954)、サイコロで選んだ映画を観て評論する「シネマハスラー」、番組スタッフやゲストが様々な自由企画を行う「サタデーナイトラボ」等々、ラッパーならではの流暢で豊穣な語り口の宇多丸と個性豊かなスタッフが展開する「タマフル」はだんだんと注目を集め、放送一年を経た頃から一気に人気番組となりました。
 2009年には日本ギャラクシー賞DJパーソナリティ部門を受賞し、名実ともに日本トップクラスのラジオ番組に上り詰めました。そして放送5年目に突入した現在も勢いは衰えず、最前線のラジオ・エンタテインメントで在り続けています。


   ***


 そんなタマフルの 4周年記念企画として製作されたDVDが本作『タマフル THE MOVIE』! 監督は『SR サイタマノラッパー』シリーズや『劇場版神聖かまってちゃん』などを手がけ、タマフルとも懇意にしている映画監督・入江悠
 内容は、タマフルの現場を舞台にして宇多丸はじめスタッフが本人役で出演している、虚実入り乱れるセミドキュメンタリードラマとなっています。



 ~あらすじ~

 タマフル・イズ・デッド。
 今なお衰えることのないクオリティのナンバーワンラジオ・・・の実態は、ルーチンワークと腐りきった人間達の吹き溜まりだった。
 モニタルームには「苦情メールは基本無視」「数字至上主義」の文言が掲げられ、音響スタッフは仕事そっちぬけで他事にうつつを抜かす。アドバイザーの妹尾は放送中に電話で雑談、コーヒーをたかりに来るだけの存在。そしてブース内では、宇多丸の相手をする古川耕はトークに生返事を返すばかり、さらにメーカーからの提供品をヤフオクにかけ、挙句の果てに番組プロデューサーの近藤とデキていた。しまおまほは何故かインド呪術にかぶれていた。
 無気力、職権乱用、癒着、方向分散。ほかにも現行タマフルの醜態を、カメラはインタビュー形式で次々に映していく。
 そして関係者達の重い口を割って明かされる、タマフル最後の生命線であるはずの宇多丸の、決して知られてはならない重大な秘密とは・・・。

 一体何がタマフルをここまで堕落させてしまったのか?
 全ての元凶は、「あの男」。彼の金権欲そして暴力性が、かつての最高のラジオを変えてしまったのだ。
 
 そしてある日、リスナーからの一本のメールが引き金となって、死に体と化したタマフルにカタストロフが訪れる!
 タマフルはこのまま終わってしまうのか、それとも―――?

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 まず感想として・・・いやすっげー面白かったです。
 先に書いた通り、タマフルの番組スタッフ(通称タマフルクルー)は皆誰もかれも個性的なのですが、本作はそれを何倍にも増幅されています。
 最初は普通のドキュメンタリータッチで、中盤からどんどんフィクション性が高められていって最後に爆発するという『第9地区』方式の中で、彼らのキャラクター性もボルテージをあげて最後のトンデモ展開にも耐え得るものとなっていました。
 役者ではないので皆ほぼ棒読み演技ですが、そこはセミドキュメンタリーということでカバーされるし。自身もタマフルリスナーである入江監督ならではの、素晴らしい味付けだったと思います。
 まあこの辺は出演者たちによるコメンタリーでも語られていたことですね。


 さて、もうちょい突っ込んだ感想として。

 何年も続いている人気番組には、それが本当か否かは別として、どうしても「昔の方が良かった」「今の○○はもう終わってる」っていう意見が出てくるものだと思うんですよね。それは、実際はリスナーの思い出補正だったり番組の方針転換に納得できていなかったり、単にイチャモンつけてるだけだったりすることが多いですが(勿論実際にダメになっているケースもあるでしょう)
 タマフルも6年目ともなれば、そうした意見は探せばわりと簡単に見つかります。

 そんな時期に、「タマフルはもう終わってる」という内容のセミドキュメンタリーを制作することは成る程大きな意味があります。ある種先制攻撃的に「終わってる」イメージを自分達自ら演じ具現化してみせる。そしてまた自身でそれをぶっ壊してみせる。
 とてもうまい戦略だなー、と。よく出来てる!

 ファンにとっては、「こんなタマフルもみてみたい」という深層イメージに応えてくれているもので、また単に自分たちの好きなタマフルクルーが映像で演技しているという極上のファンムービーでもあるでしょう。僕自身、メインの宇多さんや古川さん、しまほさん以外にもラジオでは顔の見えなかった近藤Pや高橋さんが出演しているのは嬉しかったですし。
 先にも書いた各人の個性の暴走には死ぬほど笑わされました。
 特に、出演者陣も満場一致で認めている、橋本吉史名誉Pの怪演! 元学生レスラーならではのアクション、底知れない暴力的な目つきなど、他の出演者とはケタ違いの存在感を発揮していました。
 ここは彼自身の潜在能力と、入江監督の演出手腕の面目躍如といったところでしょうか。

 タマフルによるタマフルファンのためのファンディスクとして、最高の作品だったと思います。


 しかし。
 不満点がないわけではない。むしろ、一つ大きな点がありました。

 タマフルが実はもう惨憺たる現状で宇多さんがあんなことになっていて、橋本名誉Pが物凄くて、終盤ではあんなメチャクチャな展開になって・・・という、「虚実入り乱れるセミドキュメンタリー」としての「虚」の部分は非常に面白かった。
 ただ、その分「実」をもっと観たかった、と思うのです。
 「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」が実際にどのようにして製作、放送されているのか。そこを、本当のドキュメンタリーとして映してほしかったなーと。
 タマフルの企画会議、どういうアイディアが採用されてボツになるのか、放送中ブースの外はどんな様子なのか、動画としてのDJプレイ、シネマハスラーノートはどう書かれ、読み上げられているのか。そういう「実」の部分も、ファンはもっと観たかったと思う。少なくとも僕は。
 そんな実際のタマフルを最初に描いて、そしてその後で「こんなタマフルは嘘で、実はもう終わってるんだよ」という「虚」のフィクションストーリーが始まっていったら、その後の展開にももっとリアリティと興奮を感じられたのではないでしょうか。
 しかし本作は最初から「タマフル終わってる」ストーリーで始められているので、これ「虚実」っていうか「虚」しかなくない?と。勿論その「虚」の中で、どこまで嘘か本音か分からない部分はありますが、全体としてはフィクションストーリーに乗ったものでしかない。

 だからもっと言えば、ストーリー自体にも、入江監督のファン精神を超えた映画監督としての批評精神が欲しかったです。「そこを突いちゃったら、本当にタマフル終わっちゃう!」っていうくらいの毒気も込みで中盤を描いてこそ、最後の大団円にカタルシスが生まれたのではないでしょうか。
 そこら辺、入江監督の遠慮が感じられました。
 タマフルクルーによるコメンタリーで、皆があまりにも楽しげに本作を観て盛り上がっていることがその証明であるように思います。
 もっと、ガチンコでぶつかっていっても良かったのに。「THE MOVIE」=映画のタイトルを冠しているのならば。
 これではただのファンディスクの域を出ていないんじゃないですか。

 ・・・とまあイチャモンつけちゃうほどに、楽しいDVDだったってことなんですけどね。
 本当にファンディスクなんだから、それでいいんだし。
 あんまり出来が良いから、もっとシリアスな内容も夢想しちゃった、という話。

 もし次があるなら、今度は想田和弘監督にガチのドキュメンタリーとして撮ってもらいたいなーなんて思いました。

 兎にも角にも、『タマフル THE MOVIE 暗黒街の黒い霧』、非常におススメでーす。

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