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蛍火の杜へ

2012.05.09 02:02|映画感想
・その刹那こそ永遠
『蛍火の杜へ』

蛍-1

2011.アニプレックス
原作:緑川ゆき
監督:大森貴弘
美術:渋谷幸弘 音楽:吉森信
キャスト:内山昂輝、佐倉綾音ほか
アニメーション制作:ブレインズベース


※ネタバレあり
   ***


 まずはじめに、アニメ/実写を問わず、これほど抑制の効いた恋愛映画を観たのは一体いつ以来だろうか。ていうか、今まで観てきた中で、果たしてこれほどのレベルのものがあったのか?
 人ならぬ少年・ギンと少女・蛍の、キスにも至らなかった儚い恋物語を、ひたすらに穏やかで美しい音楽・映像で綴っていく。少しでも大仰な演出を仕掛ければ全てが壊れてしまうとでもいわんばかりに。

 そして本作を妖怪映画として捉えた場合も、やはりこれほど抑えた妖怪映画もそうそうあるまい。
 特にアニメで妖怪モノをやるとなれば、例えば『ゲゲゲの鬼太郎』『千と千尋の神隠し』『豆腐小僧』そして今年の『ももへの手紙』のように、監督はじめアニメーター達のイマジネーションを爆発させて、全てが生き生きと躍動する一大妖怪絵巻を現出させずにはいられないはずだ。
 それがこの映画では、山神の杜に棲まう妖怪達は、あくまで主役二人の恋の幻想感を彩る役割に留められ、時折闇の向こうから二人の様子を伺って顔を出すのみだ。クライマックスの妖怪祭りでだって、皆人間のふりをして背景になっていた。

 余計なことはしない。
 全ては、ギンと蛍の恋の行く末をただそのままに滞りなく語り切るために。

 だから、二人の関係がああいった結末を迎えてしまったとしても、物語から、妖怪から、創り手達から、二人の恋は最初から最後までそっと見守られ、祝福されていたのだ。 
 だから観客の僕も、本作を観終わっても全く悲しい気持ちにはならなかった。

 そんな、映画の背景に徹した妖怪達の姿は、今まで観てきた妖怪映画のどれとも異なり、好ましく、優しい。


   ***


 そして、蛍が劇中で最後に発した言葉。

 (いきましょう)

 そのタイミングでのその一言に、この映画の本質が集約されている。

 最初から生きる時間、生きる場所が異なっていた二人。決して実ることのない想い、永遠には続かない関係性。原作・緑川ゆきの透徹した世界摂理の中で、しかし二人はその悲運を声高に嘆くようなことはしない。
 
 ふとした拍子に己の命脈を綻ばせてしまったギンがついに蛍を抱きとめたあの一瞬、たしかに二人は一つになっていた。
 ならばそれが全てじゃないか。

 わたし達は出逢い、ともに過ごし、そして分かたれた。
 わたしは人間だから、この歩みを止めることはできない。
 だから、始まりも終わりも全て受け入れて、想い出を抱いて一緒に。

 (さあ、いこう。いきましょう)

 そのたおやかな決意を胸に刻んで、蛍の夏はまた巡りゆく。


 ささやかで美しい、妖怪/恋愛映画の傑作を観れました。


   ***


 ・・・とまあ、こんな風に互いにふれ合うこともできないカップルだっているんだからね、我が弟よ、俺の部屋の隣に彼女を連れ込んでイチャイチャするのをいい加減に止めろ(台無し)


 追記:えー、こんなピュアな物語を観た反動で↑のような最低のオチをつけたら、見事それ相応の天罰を喰らいました。
 やはりお化けの出る映画を軽んじてはいけませんね。これから『ももへの手紙』の感想書くのがすごく恐いです。
 皆さんも気をつけてください。

 (2012.5.10)

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テーマ:映画レビュー
ジャンル:映画

tag:蛍火の杜へ

Comment

劇場で観て泣いたのが
何だか最近のようなんですが、
悲しいだけの涙ではないんですよね。
切ないほどに綺麗な、二人の思いが繋がる瞬間に涙でした。
あの音楽とセリフのタイミング、絶妙でしたね。
原作からの足し引きも素晴らしかったと思います。
緑川×大森×吉森…いつまででもこのチームの作品を
観ていたいです。

>かえるちょこさん

コメントありがとうございます。

かえるちょこさんのブログ感想読んでからずっと、観てみたかったんですよね。
紹介に感謝です。

> あの音楽とセリフのタイミング、絶妙でしたね。

いやあ本当に、絶妙な終わり方でした。
これは本当に劇場で観るべきだった! 夏の夜とかに観れたら最高だっただろうなー。

> 緑川×大森×吉森…いつまででもこのチームの作品を
> 観ていたいです。

『夏目』の伍は当然のように期待しているし、また緑川先生の他の短編も映像化してほしいですね。
あ、でも大森監督には『デュラララ!!』の二期も早く作ってほしい・・・。

はじめまして^^原作ファンです。
緑川さんの作品は『夏目友人帳』も含め、
「人の世界」と「妖の世界」の境界がどこか曖昧なのですが、
アニメは絵柄のせいもあってか、地に足のついた、
「人の世界」に近い世界観だなという印象を持ちました。

人と妖がふれあうことによって、
妖(ギンは妖ではありませんが)が安らぎ、
ふれあった想いが、その頂点で昇華(成仏)し、
永遠のものとなっていく――
人と人とのふれあいとは違い、
人と妖のそれはとても幸せなこと。
この儚い美しさが、緑川作品の魅力のひとつですね。

>通りすがりさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

> アニメは絵柄のせいもあってか、地に足のついた、
> 「人の世界」に近い世界観だなという印象を持ちました。

おお、なるほどの解釈です。
特に『夏目』では、話が進むごとに「夏目の人間世界での身の置き方」がテーマとなっていくので、こうした絵柄も必然なのかもしれません。

> 人と人とのふれあいとは違い、
> 人と妖のそれはとても幸せなこと。
> この儚い美しさが、緑川作品の魅力のひとつですね。

緑川作品は、とにかく「無常」が一貫していますよね。
人と妖は本来はお互い相容れるはずもない存在だからこそ、本作での二人の相思相愛の関係は、それが一時のものであっても、最初から奇跡で幸せだったんですよね。

また是非お越しください。
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