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UN-GO各話感想⑥ episode:0 因果論

2013.01.17 02:11|UN-GO
 青春再びかえらず、とはひどく綺麗な話だけれども、青春永遠に去らず、とは切ない話である。
 (坂口安吾『青春論』1942)

 UN-GO各話感想、ようやく終了ー。
 なぜにこんなに遅くなった。今頃誰が読むというんだ・・・。
 ここはやはりUN-GO2期を(ry
 
   ***

『UN-GO episodo:0 因果論』

 原案:坂口安吾『『魔教の怪』(『明治開化 安吾捕物帖』)、『復員殺人事件』
 監督:水島精二
 脚本:會川昇 キャラクターデザイン:pako、高河ゆん
 音楽:NARASAKI
 キャスト:勝池涼、豊崎愛生、戸松遥ほか
 アニメーション制作:ボンズ


 20111202_979372.jpg

   *** 

 本作は、TVアニメ『UN-GO』の本編放送と並行して、2011年11月19日から2週間限定レイトショー上映として公開された前日譚だ。

・ストーリーコンセプト

 『UN-GO』は、コンセプトとしては「社会派」の「探偵・推理モノ」だが、事件に関わる人々のやるせない感情の発露、何より主人公の“敗戦探偵”結城新十郎の心情の揺らぎや迷いを重視する人間描写も欠かせない魅力だ。『因果論』は結城新十郎という青年の過去をめぐる物語であり、そこでは彼のさらに若き日々での青臭い葛藤が全面的に描かれており、いち青春譚としても成立している。ひいては、単なるファン御用達ムービーではなく、一つの映画作品として。
 また、最後には全編に渡ってある叙述トリックが仕掛けられていたことが判明し、やはりミステリ作品としての面白さも備えている。

 時間は45分の中尺ではあるが、鑑賞後には90分くらいの長編を観終わったかのような感触がある。その要因の一つとして、本作がデュアルストーリーのかたちをとっていることが挙げられる。
 主人公の彼が東南アジア某国にいた時の“戦場で歌う会”との出会いとその先で起きた惨劇、そしてその後に彼が日本に帰国してから挑む“別天王会”の信者殺害事件と、二つの時間軸が並行して描かれ、時に時系列も若干前後する。そしてこのエピソード自体が、『UN-GO』本編最終話での新十郎による海勝梨江に向けての語りともとれる。
 こうした複雑で重層的な構成が、45分という短い尺の中での濃密な物語をかたちづくっている。これも、戦後・現在・近未来の社会を重ねて描く『UN-GO』本編の多重構造に連なるものだ。今回の『因果論』では、社会に加え結城新十郎の自分史を多層的に描こうというわけだ。


・「少年期」

 主人公が出会った“戦場で歌う会”は、掲げる名前の通り、紛争地のキャンプで子ども達のために歌をうたうことを目的としていた。会のメンバーは主人公の彼にキャンプまでの道案内を頼み、途中の宿泊地での夜、予行演習なのかいつもなのか、用意した歌をめいめい歌い出す。メンバーの一人、倉田由子が歌ったのは、「少年期」
 劇中に登場する本作のテーマに直結するガジェットはいくつもあるが、特筆すべきはこの「少年期」だ。
 1985年に『映画ドラえもん のび太の小宇宙戦争』の主題歌に起用された楽曲。この歌はエンディングに流されるだけでなく、劇中で登場人物によって歌われる。『因果論』でもこうして実際にキャラが歌ったのは、そのシーン含めてのオマージュということだろうか。
 「少年期」は、深い解釈は色々あるにせよ、表面的には子ども時代の悲しみ・あてどなさと、大人になる不安などを歌いあげたものだ。

 (ああ 僕はどうして大人になるんだろう
  ああ 僕はいつごろ大人になるんだろう)


 この歌の内容が、『因果論』の物語とキャラクターの内面に繋がっている。糾弾されやすく脆い理想を掲げる由子をはじめとした“戦場で歌う会”の若者たち、そして夢を達成できず地道に生きることもできずに燻ぶる主人公の心情。
 そして、「少年期」がもう一度劇中に現れるのは、主人公の帰国後の日本での事件と交互に描かれた末のクライマックス、紛争地付近の洞穴の奥底にて。
 洞穴に封じられていた“因果”が主人公に取り憑き、会のメンバーの心の叫び=ミダマを次々と露わにするとともに命を奪っていき、最後に由子のミダマを明らかにしようとする。
 由子はそれを拒み、前述した「少年期」の歌詞を口ずさむと、自らにギターの破片を突き立てて絶命する。
 つまりこのシーンでは、現実を自覚すること、自らの本心に向き合い曝け出すことが「大人になること」とされていて、由子はそれに抗ったのだ。その表象としての「少年期」。

 さらに、「心なんていくつもあって、それが全部真実でしょ」という彼女の科白は、因果のミダマを引き出す能力の絶対性に一石を投じている。言葉による告白として開示されたミダマは、言語化された時点でその人の心を「確定」させてしまうのだ。いわばそれは最大公約数のようなもので、心そのもの全てでは有り得ない。
 そのうえで、後に“敗戦探偵”結城新十郎となった彼は、因果とともに人間の真実を求める。あくまでミダマを暴くのは手段であり、本音も建前も含めた人の心の在り様を見つめるために。


・『UN-GO』の音楽

 「少年期」が最初に歌われた場面では、そのほかにも「あの素晴らしい愛をもう一度」(1971)、「セーラー服と機関銃」(1981)などが歌唱されている。これらの懐メロの選曲(ちなみにどれも映画主題歌)は、スタッフが安吾作品要素との両輪で、若いアニオタだけでなく中高年層にもターゲットを広げていることの証だろう。より普遍的な、全世代的な青春譚として・・・(また、TV本編の第2話では、「ブルーライト・ヨコハマ」(1968)が物語テーマに密接に絡んだかたちでやはりキャラクターによって歌われている)。

 事実、私の見た限りではあるが、『因果論』上映の劇場や池袋でのオールナイトイベントの際には、アニメ作品としては異例なほど観客に中高年の方々が多かった。また、ノイタミナ作品らしく女性客も。
 老若男女、各層に狙いを散らした本作の意図は、充分に達成されていたように思う。


・メディアミックスから見える「人間」としてのキャラ達

 そして『因果論』は、この映画版だけでなく、小説版、漫画版とメディアミックス展開を行っている。しかも映画の内容をただトレースしただけのモノには留まらず、それぞれで設定や展開が明確に異なっている。

 小説版は、『UN-GO』の全話脚本をつとめた會川昇自身による、彼の十数年ぶりの小説作品となっている。冒頭に『因果論』の中で主人公の帰国直前の事件を描いたオリジナルエピソードを置き、『因果論』本編では地の文を活かして『UN-GO』の世界観や戦争の経緯が詳細に綴られている。また、ラストのある決着は映画版とは違ったものになっている。
 漫画版は、キャラデザの高河ゆんpakoがそれぞれネームと作画を担当し、ストーリーは會川によって何と『UN-GO』本編の時系列の中で起きたものに改変されている。さらに、キャラクター達の関係性も大きく変化し、主人公と由子、そして重要キャラの世良田が初対面ではなく幼馴染という設定になっていて、本作の恋愛要素が三人の三角関係として最も際立ったものになっていた。本編からの登場キャラの風守が活躍し中盤以降の展開も小説版以上に映画版から遠ざかったものに。

 こうして媒体毎に大きな違いがありつつも、私は不思議と『因果論』という物語としての全体的なイメージはどれも同じものに感じた。それは、中核となるキャラクター達が、設定や関係性がいくら変わろうとともある種の一貫性を持っているからだろう。
 例えば、主人公の彼と由子は、映画版では、互いの心情にふれた夜に事に及んだのかどうかは描写されていない。二人が幼馴染で数年ぶりに再会した設定の漫画版では、体を重ねるシーンがはっきりと描かれる。しかし二作品での彼らを別人とは感じない。「彼らがこういう関係だったら、確かにこうなるだろうな」という説得力があるからだ。
 それは、『因果論』含めて『UN-GO』における全ての登場人物が、設定の寄せ集めではない柔軟な「人間」として構築されているからだろう。軸がブレても変わらないために、展開が変化しても同一のキャラクター達が成す物語としての根本・総体はそのまま、というわけだ。


・ボンズ作品の系譜
 
 『因果論』及び本編『UN-GO』のアニメーション制作スタジオはBONES(ボンズ)。ボンズは他にも多くのアニメ映画や劇場版を制作しており、その文脈で本作を捉えてみるのも面白い。

 たとえば、2005年公開の『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』
 『UN-GO』と同じく監督・水島精二、脚本・會川昇のタッグで作られ、原作漫画から完全に離れた(でも実は表裏一体の)オリジナルストーリーが展開された。物語は「誰も世界と無関係ではいることはできない」というテーマを掲げ、「個人」と「世界」の間を埋める戦争・社会の姿が描かれた。ラスト、主人公のエルリック兄弟はやがて未曾有の大戦に覆われゆく1920年代の現実世界に残り、そこで自分達が成すべきことを自覚して生きていくことを選ぶ。
 『UN-GO』はテーマ的にはほとんどこの『シャンバラ』の続編と言っても良いと思う。

 2007年の『ストレンヂア―無皇刃譚―』
 戦国時代日本を舞台に、権力者達の思惑の中でストレンヂア(異邦人)達が戦いを繰り広げる剣戟アクション時代劇。
 観た人には分かると思うが、『ストレンヂア』主人公の“名無し”と『UN-GO』の新十郎のキャラクター性は重なるところが大きい。『因果論』は『ストレンヂア』の後継・・・というより、主人公の彼が色々な意味での“ストレンヂア”になるまでの物語だ。

 そしてこの2作と『因果論』に共通するトピックとして、「戦争」は言わずもがな、「成就しない恋」がある。
 『シャンバラ』では主人公とヒロインは世界を隔てた別離に至り、『ストレンヂア』で君主の姫に恋した若侍は戦乱の中であえなく散る。そして『因果論』での主人公の彼と由子の恋とも呼べないような一時の交歓がどんな結末を迎えるかは見ての通りだ。
 ちなみに、そうしたほろ苦い恋の行方が多いボンズ映画のなかで、『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』が、恋の、いや「愛」の成就をどストレートに描いているのは印象深い。

 これはTVアニメだがボンズ作品として、2009年の『DARKER THAN BLACK 流星の双子』。
 主要キャラ・黒(ヘイ)の出で立ちに「因果論」での新十郎がやたら似ている。まあこれは偶然の一致の範囲だろうが。
 しかしこうしてみると、ボンズ作品(特に映画)って、主人公が世捨て人のやさぐれ男のパターン多いな・・・。

 最後に、ボンズ制作ではないが、『ストレンヂア』と同じく2007年公開の『鉄人28号 白昼の残月』も挙げておきたい。
 今川泰宏監督によるTVシリーズのパラレル世界的な設定の劇場版。主人公・正太郎少年と同じ名の兄・ショウタロウが現れ、鉄人のリモコンを奪って大破壊を行おうとする。戦争の亡霊として、その過去を消し去ろうとする日本に今再び戦争の記憶を刻み込むために。
 この「忘却されていく戦後」というテーマ性には、『UN-GO』に通じるものがあるだろう。

   ***
 
 長くなってしまったが、とにかく、『UN-GO』TV本編を気に入って、この世界をより深く味わいたいという人は絶対観るべき。
 そして一つの映画作品、青春モノとしてもかなりの出来だと思うので、単品でもおススメです。
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テーマ:映画レビュー
ジャンル:映画

tag:UN-GO 因果論 坂口安吾 水島精二 會川昇

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>seafhさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

> 自分は本編を数回通して視聴していたのですが、まだまだ新しい発見考え方があったことには驚きです。
自分でも、書いてるうちにどんどん新たな気づきが出てきて驚きでした。
これもUN-GOという作品の濃密さ故だと思います。

>あと切実に2期希望。
いやほんとにw
監督脚本家ともに意思はありありのようなので、お偉いさんが動いてくれることを望むばかりです。

またお越しください。

No title

ようやく12年のアニメのまとめ後篇書けそうになってきたのですが、
こう振り返って眺めた時になんか物足りないのは
やっぱり11年の作品、『あの花』がベストですが一方で
『UN-GO』と『ピンドラ』が唯一無二過ぎて、あの存在感の空白が気になってしょうがなかったです

本当に、こんなに2期を望むアニメは他にないですね UN-GO2期来い!
ノイタミナ刀語の再放送とか誰得。。。誰の都合。。。

>ヒノキオさん

コメント有難うございます。

> やっぱり11年の作品、『あの花』がベストですが一方で
> 『UN-GO』と『ピンドラ』が唯一無二過ぎて、あの存在感の空白が気になってしょうがなかったです
2012年が不作だったとは思わないんですが、その二作のような「切実さ」を抱えたものを見つけられたというと、確かに・・・。
まあ、あの2011年のぼくら視聴者の気分というのも大きく影響していたんでしょうが。

> 本当に、こんなに2期を望むアニメは他にないですね UN-GO2期来い!
そう、UN-GO2期も絶対希望なんですけど、「本格ミステリー・ワールド2013」の鼎談のなかで會川さんが、「たとえば仮面ライダーが存在している世界で、よど号ハイジャック事件や連合赤軍事件が起きるというような」「アクションもの、ロボットもの、ヒーローもの」をやりたいとも語っていて、そっちもすげえ観たいなあと思ってます。
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