劇場版BLOOD-C The Last Dark

2012.06.30 16:24|映画感想
・あの素晴らしい悪意をもう一度
『劇場版BLOOD-C The Last Dark』

 2012.松竹
 監督:塩谷直義
 脚本:大川七瀬/藤咲淳一
 キャラデザ・総作監:黄瀬和哉
 音楽:佐藤直紀 美術監督:小倉一男
 キャスト:水樹奈々、神谷浩史、橋本愛ほか
 制作:ProdutionI.G

無題
 先日、恋愛絡みでかなり気まずくムシャクシャすることがあって。
 あーもうピュアピュアな恋物語なんか受け付けない、真反対のドロッドロの愛憎劇、謀略裏切り満載、内臓でろりん血飛沫ぶしゃーのスプラッタアクションが観てぇ! 
 そういう状態の自分にこれほど相応しい映画もないに違いないと、本作を鑑賞。

 結果として、なかなか良かった。劇場に足を運んだ価値はあったと思います。

 以下、感想。
 わりと批判的なことも沢山書いているのでご了承ください。

 ※ネタバレ満載!
 まずは、元のTV版『BLOOD-C』から語りましょうか。

 ProductionI.Gの社内人材育成セミナー「押井塾」の課題作品から始まった『BLOOD』シリーズ。
 「セーラー服の少女“小夜”が日本刀で吸血鬼と渡り合う」というコンセプトを共通項として、具体的な物語やキャラクターは各作品で異なる。
 今までに、始まりの中編映画『BLOOD THE LAST VAMPIRE』、一年間のTVシリーズ『BLOOD+』、香港・フランス合作の実写映画『LAST BLOOD』が作られ、そして本作『BLOOD-C』がこの系譜の最先端となる。

 『BLOOD-C』は元々劇場版を前提として制作され、まず前日譚としてのTV版が2011年夏に全13話で放映。
 TV版の監督は水島努(『大魔法峠』『侵略!イカ娘』など)。原案・キャラデザはCLAMPが手掛け、脚本にもCLAMPのストーリー担当の大川七瀬藤咲淳一と共同でクレジット。藤咲淳一氏はこれまでの『BLOOD』シリーズの原案や脚本を務めてきた人。

 この、TV版についての僕の感想ですが。
 コレを端的に表すならば「悪趣味」のひとことに尽きるのではないでしょうか。良い意味でも悪い意味でも・・・って「悪」趣味なんだから悪い意味でしかないんだけど。

 とにかく、観ていて非常にストレスの溜まる作品だった。
 何がストレスって、同じ話を5話以上も繰り返しているということ。
 主人公の小夜が昼間は平和な高校生活を級友達と一緒に過ごして、夜になると「ふるきもの」なる化け物が出現して、豹変した彼女が刀でソレと戦う。
 そのワンパターンが、延々と繰り返される。否、その歪な均衡は徐々に崩されていくのだけれど、その崩され方さえもワンパターンで、結局話が大きく動く10話辺りまで、ずっと同じ話を見せられていたようにしか感じない。
 これには作品の根幹に関わる大きな「仕掛け」があって、それをCLAMPの箱庭的世界観でカモフラージュするというのは、狙いとしてはなかなか良かったと思う。しかし、その図式があまりにも見え透いてい過ぎた。 
 そして、その繰り返しの中で起きるグロシーンがちょっと度を越してグロい。『BLOOD』シリーズは元々出血量には定評のある作品ですが、この『BLOOD-C』においてはその見せ方が露骨というかこれ見よがしというか。凄惨美とはとても呼べない、ひらすらにグロテスクなだけの血が流れる。しかもそれを白光や闇で隠すっていうね! DVD売上のためかなんか知らないけど、放送できないなら描くなよ!

 で、ラスト二話にきて、ずっと隠されていた真実が、小夜にこれ以上ない程の悪意たっぷりに叩きつけられる。全てを科白で説明して。そしてその後何か起きるかというと、それまでの比じゃないグロ表現で描かれる一大虐殺絵巻。血飛沫絶叫死体のメガ盛りコース!
 そして全てを奪われた小夜はある人物への復讐を誓い、続きは劇場版で!

 観た後に残ったのは、この上ない不快感、虚脱感。
 これを悪趣味と言わずして何と言おうか。
 FUCK!

 そもそも劇場版を正念場として制作が進められた『BLOOD-C』の前日譚を描くにあたって、深夜一クールという枠は長過ぎたのではないでしょうか。絶対これ、OVA5話程度で済む話でしょ。
 その空白を埋めようと、水島監督の過激な演出テク、CLAMPの酷薄で耽美な箱庭的世界観、『BLOOD』シリーズの血生臭さが非常に歪な形で結合した結果、この『BLOOD-C』TV版という悪趣味極まりない一作が生まれ落ちてしまったのだと思います。

 ・・・で、ここまでこき下ろしておいて、実際僕がこの作品を嫌いか好きかっつーと、実はわりと好きだったり。ここまで後味悪いと一周回って清々しかったです。自分もたいがい悪趣味だ。
 この俗悪さを最初から看破できていれば、全力で楽しめていたのかも。
 けして傑作とは思いませんが、まあ、一度観たらしばらく忘れられない怪作、奇作ですよね。
 

   ***


 さあようやく本題、劇場版の話に行けるぞ。

 冒頭の通り諸事情でイライラしていて、いっそとことん厭な思いしようと思って本作『劇場版BLOOD-C The Last Dark』を観に行ったわけなのですが。

 結果として、予想外だった部分と予想通りだった部分がありまして。


 まず予想外だった点。

 TV版とは桁違いだった映像クオリティはいわずもがな。
 そしてTV版を観ていた身としては、脚本の出来がかなり良かったことが驚きでした。
 本作はTV版の続きなわけですが、その実、続きというよりはリフレインに近いんですね。『BLOOD-C』の構造――小夜が周りの人間と関係を築きつつ超人的アクションで化け物を倒していき、そして最後には全てが謀りであったことが明らかになり、小夜は絶望してその場を去る。TV版で十三話も費やされたストーリーの型が、この劇場版では新たな形で二時間に圧縮されてコンパクトに語られている。TV版の冗長だった部分を排して良いとこ取り。そして物語の完結編でもある。
 やっぱりこれくらいの尺でイケるんじゃん、話もきちんと終わったし、これなら面白いよ!と心中で喝采を送りました。じゃあ本当にTV版って何だったんだ、って話になりますが・・・。

 そして、同じかたちの話ではありながら、TV版では最後には嘘とされて、この劇場版では最後まで本当だったもの。やはりTV版視聴者としては、今回も「それ」は嘘っぱちなんじゃないかとずっとビクビクしていたのですが、「それ」がラストシーンで元の場所を失くしても本物として描かれていたのを見届けでようやく安心できました。
 もちろん、「コミュニティの土台が偽りで、全てはある人物の掌の上だった」という結末はTV版と変わらず、やはり再び絶望してしまった小夜にとっては慰めにもならないのかもしれないけれど。それでも観客の僕はあの少女と同じく、彼女がまた「彼ら」と再会を果たすことを願わずにはいられない。
 この、ギリギリの希望への着地は、なかなかに良いものだったと思います。


 そして予想通り、『BLOOD-C』らしい悪趣味さも健在で。

 反乱組織サーラットを率いる殯蔵人が最後の最後で露わにした醜悪な本性。
 TV版では小夜の級友ほぼ全員と先生が本性をぶっちゃけていましたが、この劇場版では彼一人がその役割を担っていました。それでも迫力に欠けることはなく、やっぱり『BLOOD-C』の最後にはこれがなくっちゃね、という期待に十全に応えるぶっちゃけ振りでした。やっぱCVの神谷さん、こういう鬼畜系キャラ似合うなあ・・・。

 極めつけは七原文人についての描写。
 彼はTV版において小夜の記憶と人格を消してある勝負をもちかけ、結果として小夜の全てを奪って姿を消した。その行動の理由が本作で語られるわけですが。
 正直、これを、「愛」だなんて騙られても、全然納得できない。
 結局彼は「自分を殺しにくる小夜」をずっと見ていたいだけで、小夜の心情なんざこれっぽっちも考えていない。それは愛ではなくただのオタク的所有欲だ。そして彼の人間離れした欲望は、小夜との決戦において文字通りの「怪物」として顕現する。しかもソレはあっけなく小夜に滅ぼされる。
 この歪んだ妄執が『BLOOD-C』世界においてはあたかも愛の究極形かのように描かれていて、ああ良い感じに狂ってんなあ、と。


 とまあ、僕が望んだ悪趣味な物語をハイクオリティな映像・音響、大画面で堪能でき、そして一抹の幽かな希望も感じとれて、豊穣な劇場体験でした。


 ただ一つ気になった点としては。
 劇中での情報統制がかけられた東京と本当の情報(真実)を隠蔽/捏造された小夜のアイデンティティクライシスの相似は、言わんとしていることは分かるのだけれど、もう一歩踏み込みが足らなかったのではないかと。それが話の本筋に絡んでいかなかったために、結局ただの社会派っぽい背景に留まってしまったように思いました。
 ここには『BLOOD』シリーズの新たな可能性を感じただけに、残念でした。
 まあ、国の助成金を受けてこういう要素を含んだ映画作ってるっていう時点で、充分に小気味良いのですけどね。   
 

 いつかまた、新たな『BLOOD』がみられることを願います。


   ***


 蛇足:ラストであの人がちゃっかり都知事当選を果たしていて、笑っちゃったw

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tag:BLOOD-C 劇場版

Comment

こんにちは(^^)/

ムシャクシャは吹き飛ばせましたか…?
この作品では中々難しいですかねw

そうなんですよねー、
テレビ版、振り返ると本当にただ序章なので
商業的な臭いがしますね。
丁度、映画化作品が多かったから
その中でうまく紛れてたように思います。
まぁ嫌いじゃないんですけど、決して。

神谷浩史のキャスティングには同じく
納得、と思わず両手でポン状態でしたw

文人の愛が世の中で通ずる純粋な愛であったら
嫌ですねぇw
私としては、あれは愛だったと思うんです。
でもそれは“文人の中”では純粋な愛なんだろうな、と思います。
客観的に見て理解できない異常な形ですが。
欲しいから手に入れるだけじゃ愛は成り立たないんですが、
言っちゃってますもんね、「欲しいよ」って。
彼の中では愛として筋が通っちゃってるからこそ
あそこまで狂ったことができるんだろうな、と。

個人的には四月一日の存在が
小夜の切なさをより一層引き立てている気がしてなりませんでした。

>かえるちょこさん

コメントありがとうございます。

> ムシャクシャは吹き飛ばせましたか…?
> この作品では中々難しいですかねw

いや、わりとスッキリしましたよ。
マイナスにマイナスかけてプラスにした感じw

> 神谷浩史のキャスティングには同じく

夏目みたいなキャラもいいですけどね、腹に一物あるキャラを演じると一際輝いているような。

> 私としては、あれは愛だったと思うんです。
> でもそれは“文人の中”では純粋な愛なんだろうな、と思います。

そう、彼の中では紛れもなく愛だったのでしょうが、それを巨大な権力で以って行使すると狂気じみてみえるんですよね。
まあ逆に合理的でどこにも角が立たない愛ってのも有り得ないんでしょうけど。

> 個人的には四月一日の存在が
> 小夜の切なさをより一層引き立てている気がしてなりませんでした。

彼もまた自己の存在があやふやなキャラクターでしたからね。小夜の境遇に何か思うところがあったはずです。
『BLOOD』にCLAMPワールドから彼が関わってきたのも必然といえるでしょう。

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プロフィール

江楠

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